中国発世界的株安を受けて
2月27日、中国の上海株価指数が9%近くの下落を示した事が発端となり、世界的に株安が広がりました。アメリカのダウ30種工業平均指数も416ドルと、2001年同時多発テロ直後以来の下落幅を示しました。今回の世界的株安をどう捉えるか、私の見方は去年6月と同じです(第166回 リスク・プレミアムと株価変動率(2)(2006年6月12日)参照)。即ち今回の株安も、中長期的に見れば格好の買い場を提供してくれているに過ぎないと考えています。今一度「シンプルな株価評価モデル」をご覧下さい。第177回 良いビジネスが安くなる時(1)(2006年10月2日)でも申し上げた通り、満期のない永久証券である株式の価値を日々変化させるのは国債利回りとリスクプレミアムです。しかし、例えば長期国債の利回りは現在、年初来最低水準にまで低下しており、株価の下落要因になったとは思えません。やはり今回も殆どの要因はリスクプレミアム、即ち投資家心理(不安心理)にあると考えるべきでしょう。下のチャートはシカゴで取引されている株価変動率指数の推移を示したものです。案の定、去年7月の水準にまで急上昇している事が分かります。市場全体を相手に「良いビジネスを安く買」えるのは、正にこのような時なのです。 確かに去年、日銀が量的緩和を解除して約2ヵ月後に世界的株安が起こった事もあり、先週の日銀の利上げをもって、流動性の変化から来る調整はある程度予想できた事でした。また今回は恐らく、中国の株価指数が世界に大きな影響を与えた初めてのケースだと思いますが、それだけ中国経済の重要性が増している事実は認めねばならないと思います。しかし、上記変動率指数によって示される投資家心理、その投資家のどれだけが、中国の株価指数が旧正月休み前の2週間で16%も上昇していた事実を把握しているかは疑問です。 よくご紹介するFEDモデルによるS&P500の適正水準は最近の長期金利低下によって2100にまで上昇しました。現在S&P500指数は1400前後ですから、米国株式の割安は更に際立っています。中長期的な投資を前提にする限り、米国株式に悲観的になる理由は見当たらないと考えています。