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2010.05.16
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カテゴリ:昔話・物語
マは漫画のマ 第67回 「フェザータッチオペレーション」 柴田昌弘(しばた・またひろ)

 ハードSFの”赤い牙”シリーズで書こうか?伝奇エロSF”斎女伝説クラダルマ”で書こうか?ず~っと遡って、”宋三郎まかり通る”の頃の漫画群から何か書こうか?と思いつつ、当たり障りの少ない”フェザータッチオペレーション(1982~1988)”で書くことにしました(笑)。

 柴田昌宏が”スケバン刑事”などで知られる和田慎二のアシスタントをしたりしてもらっていた話は比較的知られているのですが、少女漫画”白バラの散る海(1973)”でデビューしたものの、純然たる少女漫画でシリーズ化されたといえば、(当麻)宗三郎シリーズ くらいで、少女漫画向けの絵とは言い難かったこともあってか、さほど人気が出たという覚えがありません。

 最初の転機となった作品が、小松崎蘭を主役とした”赤い牙シリーズ(別マ・1975/08月号~花ゆめ・1989/13号)”で、伝奇SFをベースにしながら、メカ、ガン、エロを含むハードSFを当時の純粋な少女達に提供し、結果的にこの頃から男性ファンが増加した節があるのですが、”赤い牙”に関してあえて言えば、”超少女明日香(和田慎二:別マ・1975/04月号~掲載先を変えて継続中)”と設定などに類似性がありますが、話が進むほどハードにかけ離れた作品になっていったと言えるのではないかと。

 実際、番外編の”獏(1982)”において、明日香と蘭は共闘(和田慎二との合作)しているのですが、世界観がある程度共通していなければ成立不可能なカップリングですし、明日香シリーズがヒットしていなければ、赤い牙に限らずオリジナル伝奇SF系作品を少女漫画誌から世に出せたかどうかは微妙な気がしないでもありません。

 ただ、赤い牙シリーズは回を追う毎に、従来の少女漫画の枠からはみ出す描写が増加し、それに比例するかのように男性ファンも増加し(笑)、集英社(別冊マーガレット:1/狼少女ラン1975、2/鳥たちの午後1977、4/タロン・闇に舞うタカ1978:デラックスマーガレット:3/さよなら雪うさぎ1978)から白泉社(花とゆめ:5/コンクリートパニック1981、6/ハトの旋律1981、7/ブルーソネット1981~1986、7/32シャッフル1989)と掲載誌は変わったものの、10年を越える大河漫画となったのでした。

* 赤い牙はOVA(全5巻:1989~1990)されLDにもなったものの、ファンにとって”いかがなものか?”という出来だったためかDVD化は(これを書いている時点では)されていないようです。

 ちなみに、ブルーソネットの後半からは伝奇SFの要素が濃くなっていき、後の”斎女伝説クラダルマ(1990~1996)”の萌芽をそこに感じるのですが、赤い牙シリーズに他の作品の萌芽をみることはさほど難しい話ではないと言えるくらい多くの要素を抱え込んでいる柴田作品の背骨のような存在ではないかと考えています。

 例えば、柴田作品でサイボーグといえば、小松崎蘭の恋人だった鳥飼修一がサイボーグRX-606に改造されたあたりが最初だと思われますが、”死にかけている人間をサイボーグ化して復活させる”というコンセプトは”フェザータッチオペレーション”の初期設定でもあり、シリアスで暗い話の多い赤い牙シリーズへの反動か、フェザータッチオペレーションは柴田作品としてはポップで明るい作品に仕上がっています ・・・ たぶん(笑)。

 もっとも、世の中は次第に世知辛くなっていて、連載されていた当時でも何の問題もなかったとは言い難い(大笑)、ごく普通の大学1年生でごく平凡に過ごしていた慎平のところへ、ある日突然、交通事故で両親を亡くした後、祖父に育てられていた遠縁の少女の財部早紀(たからべさき・16才)が、祖父の遺言に従って押し掛けてきてそのままなし崩しに同居生活が始まり、あわてて電話で相談した親に至っては、あそこの家は金持ちだからがんばれ(何を?)と同居を認めて息子をけしかける始末だったりします(笑)。

、ちなみに、早紀の方は、具体的に理解していたかどうかはともかく、早々と祖父から”そういうこともある”と言い含められていたことを告げるので、ある意味で何の問題も無いといえば無いのですが、妙なところで古風というか、宋三郎的なキャラと言えなくもない慎平は悶々とした日々を過ごすことになります。

 が、同居生活をしている内に、早紀の異常さに嫌でも気が付くことになり、算盤や電卓の類など足下にも寄せ付けない暗算能力などを示す一方で、世間一般の16才の少女なら知っていそうな常識にはごっそり欠落している部分があり、かと思えば百科事典のように博学な分野もあり、何よりも、常に肌身離さず黒いスポーツバック(といってもどのような形状のバックか分からない世代の方が多いかもしれませんが)を持ち運んでいるという ・・・ 慎平でなくても、大半の人が”この娘には何か秘密がある”ことに気が付くとは思いますが。

 話はやがて、早紀の黒いスポーツバックをめぐって動きはじめ、謎の組織にバックが強奪された直後、早紀が気を失ってしまって意識が戻らなくなった事で、謎を解く鍵を求めて早紀の実家である財部家へ向かうことになるのですが、屋敷の秘密の地下室で慎平は スーパー・コンピュータ(NOVA7000)によって、両親が亡くなった交通事故で脳死状態となった早紀の脳がサポートされる事で早紀の生命活動が維持されている事を知ることになり、黒いスポーツバックの中の謎の機械はスパコンのノバとの交信を行う中継器であることなどが判明します。

 スパコンのノバには、早紀の生活全般をサポートする機能だけでなく、発明者である祖父の疑似人格なども組み込まれていて、慎平の質問に答えたり助言したりもするのですが、あまりに高性能なノバは暇を持てあますようになり、早紀を支配下に置くことで、早紀を経由して世界中のコンピュータを支配するというブラックなゲームに勤しむことを思いつき、実行するようになります。

 もっとも、ノバのそういった理論展開は博士も折り込み済みだったようで、ノバが早紀の人格を消去し完全に管理下に置こうとする行為が安全装置のトリガーになっていて、ノバの壮大な野望は頓挫することになります ・・・ 一時的にですが(笑)。

 なお、早紀につきまとう謎の組織(後にRISCOMと判明)がノバの開発資金を出資していた会社であることも判明するのですが、当然、彼らはノバが完成してどこかに秘匿されている事を確信していて、その秘密を知っている存在として孫娘の早紀に目を付け、最終的に早紀を拉致し、早紀はノバの端末であり、ある意味で早紀の所有権が自分たちにあると考えるに至ります。

 その時点で、”一介の大学生VS巨大多国籍企業”とでもいった絶望的な対立構造になり、とてもとても早紀の奪還は不可能と思われるのですが、かって世界制覇を目論んだノバは、この時とばかりに株式市場に介入することで根こそぎ舞台をひっくり返してしまい、早紀を守るにはノバによる世界制覇が不可欠であることを実証してしまいます(笑)。

 その後のノバは、早紀の人格を消去して制御下に置くことこそ断念したようですが、自分自身のバージョンアップや早紀との交信能力の強化などに余念が無いようで、慎平と早紀の2人を守るという名目の下、世界制覇への路を再度邁進するようになったようです ・・・ まあ、ノバにとっては不合理な制約を伴う多少ややこしいゲームに過ぎないのかもしれませんが。

 ちなみに、連載が始まった1982年頃といえば、日本では国産パソコンの黎明期で8ビットから16ビットだと騒いでいた頃ですが、いずれにしても個人レベルでコンピュータを使っている人が変人あつかいされていた時代で、細々と個人のパソコン通信が始まって草の根BBSと呼ばれた個人営業のネットワークが話題になり始めた程度でしたから、フェザータッチオペレーションにもそういった時代の制約は散見されます。

 が、多少なりとも当時コンピュータに関わっていた連中にとってフェザータッチオペレーションの描いた世界は”近い将来において、あり得る話”と感じることができる程度にはコンピュータ関連の技術が発達していた時代ではあり、実際、その後のコンピュータや通信ネットワークの急速な進化を考えると、時代がやっと物語に追いついてきたのではないかとも思います。

 ただ、時代の制約ということでは、早紀の担いでいた黒いスポーツバックの中身の交信中継器は、サイズ的にも当時の携帯電話や軍用の携帯通信機などが近いでしょうから、今なら、早紀は携帯電話(のようなもの)を所持しているだけでかまわないでしょうし、ノバの株式相場への介入や世界制覇などももっと簡単でノバが退屈しかねない話になっている事は説明の必要も無いでしょう。

 ところで、ある程度類似したジャンルの漫画としては、約10年後に”ぶっとび!!CPU(新谷かおる:白泉社:1994)"が世に出ているのですが、10年の時間差があるだけにネットワークの概念が拡張され現実のパソコンを巡る世相もある程度反映されているのですが、ヒロイン(?)は生身の少女では無いものの、初期の常識の無さでは早紀と良い勝負のような気がしないでもありません。

 なお、この”ぶっとび!!CPU”と類似性が高く、パクリと言われても仕方がないような作品に”ちょびっツ(CLAMP:2000)”があるのですが、フェザータッチオペレーションまで遡って考察すると、”ちょびっツ”の基本設定におけるオリジナルの要素がますます減少する気がしないでもありません ・・・ ま、それぞれの作品でエンディングなどは完全に異なるのですが。

* 「ぶっとび!!CPU」は、”パソコン好きな高校生の主人公が値段に目が眩んで路地裏で購入した安価なパソコンが、箱を開封してみれば高性能な美少女型パソコン”ミミ”で、返品先が不明だったこともあり一緒に暮らし始めるのですが、実はその美少女型パソコンの背後には謎の組織があり、人類の命運がかかった騒動に巻き込まれていく ・・・ といった話。
* 「ちょびっツ」は、コンセプトだけ書くと、主人公が大学生で人型パソコンとのHが駄目という外は、”ぶっとび!!CPU”とかなりの部分が重なるのですが、話の展開や終結は異なります。

 ところで、集大成というか趣味の結晶となった”サライ”が2008/03/30で完結したのを節目に、京都精華大学ストーリーマンガコース非常勤講師へ転身され、漫画家としては事実上引退し足を洗ったそうですから、新作はもちろん、続編や後日談の類も世に出てくる可能性はかなり低いようで、古くからのファンとしては”時は行くな~”と。

(2010/05/16):マは漫画のマ 第67回 「フェザータッチオペレーション」:書き下ろし。





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Last updated  2010.05.16 11:51:50
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