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2012.02.11
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カテゴリ:植物
一夢庵 怪しい話 第4シリーズ 第339話 「アネモネ」

 ギリシャ神話において、女神達に愛され若くして散った美少年として名高いアドニス君ですが、キュプロス王キニュラスとその実の娘のミュラの間に産まれた不義の子であるといった話は4-338”BLの起源考”あたりから尾を引く話だったりします。

 乳母の手引きで夜陰に紛れて父王の寝所に忍び込んでいたすことをいたしていたミュラの正体をキニュラス王が知った時には既にアドニス君を妊娠していたのですが、キニュラス王は”オレは悪くない!”と主張し、不義の子を宿したミュラは事実上、王宮から追放されてしまいます。

 あてもなく山野を彷徨うミュラは、その辛さから神に祈り没薬の樹と化すのですが、猪がその没薬の樹に激突したときに樹が裂けてアドニスが(それこそ木の股から)産まれ、それを一連の事件の陰の黒幕だったアフロディーテ(そもそも、アフロディーテが配下のキューピッドに命じてミュラに父親を愛させたとされる)が拾い子としたわけです。

 ちなみに、アフロディーテも恋多き女神として知られ、夫もいれば愛人もいるという、深い仲になっていることが発覚した話は一つや二つでは無いのですが、ある意味で、拾い子したアドニス君にも(ギリシャ神話の神々の場合はほぼありえませんが)情が移ったのか、一目惚れしたのか手放す気が無くなったようです。

 しかしながら、立場上、アドニス君をそのまま手元で養育することはできず、人目というか天上世界の目が届きにくい、冥府の王の妃であるペルセフォネのところへ箱詰めにして(箱入り息子ですな)送り付けて、”中を見ないように”と言い含めたという話もあります。

 が、見るなと言われれば見たくなるのは神様であっても同じようで、好奇心に負けたペルセフォネは箱を開けてしまうのですが、ペルセフォネもまたアドニス君に一目惚れして大切に養育を初めてしまい、ある意味で育ての母としての情も生じてしまうのでした。

 悪事千里を走るともうしましょうか、ペルセフォネのところでアドニス君が美少年に育ったという噂はアフロディーテのところにも届き、これはまずいと思ったのか、受け入れ環境が整ったのか、アフロディーテはアドニス君を引き取りにペルセフォネのところへ行くのですが、引き渡しをことわられてしまいます。

 いくらアフロディーテといっても、ペルセフォネは冥府の王ハデスの妃であるだけでなく、ゼウスと豊穣の女神デメテルの間に産まれた娘でもあり、ハデスが誘拐して妃にした経緯で、デメテルの天上界とハデスの冥界でそれぞれ半年ずつ過ごすことになていたりもします。

 ペルセフォネが冥界にいる間は母であるデメテルが五穀を実らせない冬がやってきていると解釈できる話でもあるのですが、それだけややこしい背景を持つ女性がアドニス君の養い親になっていたわけですし、そもそも、アフロディーテはアドニス君を育てていない弱みもあったわけです(笑)。

 幾つかの異なる話があるものの、結局、こじれた話は裁判沙汰になり、1年の1/3をペルセフォネと暮らし、もう1/3はアフロディーテと暮らし、残りの1/3はゼウスと暮らす(ないし、アドニス君の好きにしてよい)といった判決が一応は出て事態は収束へと ・・・・

・・・  向かうはずだったのですが、その判決が履行されると思い込んだペルセフォネは素直にアドニス君を手放したのに対して、アフロディーテは判決を踏みにじり、アドニス君を手元に起き続ける愚策を犯すことになるのですが、端から判決を無視する気だったのか、手元にアドニス君が来て手放す気が失せたのかは定かではありません。

 ペルセフォネとアドニス君の関係が男と女の関係を含んでいた(らしい)というより、養い子に情が移ったベタ甘の養母という傾向があるのに対して、アフロディーテの場合は、年下の彼氏にベタ惚れした年の差のある女性とでもいった傾向が顕著にあるだけに、嫁と姑の争いの要素がそこには加わっていたのかもしれません。

 男の子を産んで育てている母親が、その子が小さい頃に、”こんなに一生懸命世話をして(今は)なついていても、何時か他の女に走るのね!き~っ!”とかやらかすのは実は珍しい話ではないのですが、私的には、”他の女に走らなかったら、それはそれでマズイだろうに ・・・”と思います(大笑)。

 それはそれとして、アフロディーテが判決を踏みにじってアドニス君を独占し続けたことで、ペルセフォネは激怒したのですが、なぜか判決の履行を裁判を行った担当神や法廷には求めず、アプロデイテの愛人の一人で軍神のアレスに”あんたの愛人の座も危ないもので、アフロディーテはアドニス君にぞっこんだよ~”と言いつける愚策を採用しています。

 まあ、数いたアフロディーテの愛人の中で、ペルセフォネが敢えてアレスを選んだのが偶然とは考えにくく、おそらく、ペルセフォネの脳内シミュレーションでは、直情型のアレスをそそのかせば騒動になって、アフロディーテといえどもアドニス君を手元に起き続けることは難しくなるだろうといった程度の読みだったのではなかろうか?

 もちろん、かわいさ尼って憎さ百倍になっていた可能性もありますが、ペルセフォネにそそのかされる形になったアレスは嫉妬に狂うことになるのですが、その方向性は、アフロディーテに抗議するのではなく、アドニス君を亡き者にする方向へ向かうことになり、ここにアドニス君には死亡フラグが立ってしまったわけです。

 アドニス君は下手の横好きなのか、狩猟が大好きでしばしば出かけていたようで、それで怪我をしないかとずいぶんとアフロティーテがやきもきしてたようですが、アレスからすれば、狩猟はその最中に事故死に見せかけて暗殺できる絶好のチャンスとなったようで、凶暴な猪を放ったとか、自らが猪に化けたとかいった話があります。

 かくして、狩猟の最中にアドニス君は巨大で凶暴な猪に遭遇することになったのですが、下手の横好きと前述したように、その猪めがけてアドニスが投げた槍は急所を外し、アドニスは猪に腹を突かれて致命傷を負ってしまい、そこにアフロディーテが駆けつけ、茴香の茂みに隠してさらなる猪の攻撃から守ったものの、アドニス君はアフロディーテの腕の中で死んで幕となるわけです。

 考えてみれば、冥府の女王でもあるペルセフォネからしてみれば、ただの人間に過ぎないアドニス君が死ねば、その魂の所管は自分に頭が上がらない亭主にして冥府の王であるハデスに属するわけですから、アドニス君が死ぬことは必ずしも悪い話では無く、それまでの経緯からアフロディーテが冥界にまでやってきてアドニス君を蘇らせることは(女神といっても)不可能事に属するんじゃないかと。

、 で、アフロディーテはゼウスに、”アドニスが暗い冥府で過ごすのはかわいそうだ”という建前論を述べた上で、”せめて夏の間だけでも、私のそばに置かせて下さい ・・・”と懇願し、ゼウスはアドニスの身体から流れる出て大地を染めた血を深紅のアネモネに変え、アネモネは夏になると花を咲かせるようになったというのがエピローグに該当するようです。

 かくして、アネモネは夏になると可憐な赤い花を咲かせるのですが、ペルセフォネあたりがそれも気にくわなかったためか、その寿命は儚く、夏の風が吹くと花が咲いても、二度目の風が吹くと花弁が落ちるとも言われるくらい繊細で、アネモネという名前はギリシャ語のアネモス(風の花)から来ているというもっともな話もあります。

 学術的には、アネモネ(Anemone coronaria)はキンポウゲ科イチリンソウ属の多年草ですから、儚いどころか以外としぶとい草と言えるのですが、ギリシャ神話と縁の薄い日本に渡来すると、ボタンイチゲ(牡丹一華)やハナイチゲ(花一華)、或いはベニバナオキナグサ(紅花翁草)といった派手でゴージャスな和名で呼ばれるようになったのは御存知の通り。

 話が少しややこしくなるのは、学名で”adonis”というのは”フクジュソウ属”を意味することで、そのあたりも、ペルセフォネとアフロディーテの確執を連想しないでもないのですが、そもそも論として、アドニス君はどちらの女神に傾いていたのか?というと、どうも養母でもあるペルセフォネを捨てて、年上の愛人であるアフロティーテに走っていたようで、その辺りもアフロディーテが判決を踏みにじる動機の一つになったようです。

 が、アネモネがそのゴージャスな見かけに反して、全草にプロトアネモニンという毒素を含み、例えば茎を折ったときに出る汁に触れると皮膚炎や水泡が生じることがあるのは園芸業界では常識の一つですが、人畜無害な美少年といった印象のあるアドニス君が、言葉巧に与えられた状況を楽しむ天性のコマシ男だったことをプロトアネモニンが暗示している気がしないでもありません。

 つまり、アフロティーテもペルセフォネも、自分の庇護下にアドニス君をおいているつもりで、実は(ただの人間に過ぎない)アドニス君にいいようにあしらわれていたのではないか?という気がしているのですが、当事者である女神たちにとっては、アドニス君が側にいさえすればいいだけのことで、どうでもいいことだったのかもしれません。

 深読みすれば、アフロディーテがアドニス君を茴香の茂みに隠したというのが意味深で、茴香は”不能”を意味しますから、アドニスが猪に腹を突かれたという腹が下腹部で使い物にならなくなったと解釈することもできるのですが、どうもアドニス君の場合、母性を含めて女の業や情念のようなものが渦巻く人生だっただけに、男性から見て、華やかではあるものの実態の無い虚ろな人生のように見えることは否めません。

 そう感じるのは私だけでは無いようで、アネモネの花言葉が”儚い夢”となっているあたりで、怪しい話の定説として、”他人の夢と書いて儚い(はかない)と読む”だけに、女神達の思惑によって人生を翻弄されたアドニス君は、実質的にその女神達を手玉に取る形の後半生になったものの、何かを達成したいとか、ひとかどの男になりたいとかいった、男性が成人していく過程で持つことが多い野望や野心を持っていたのかどうか?気になるところです。

初出:一夢庵 怪しい話 第4シリーズ 第339話:(2012/02/06)





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Last updated  2012.02.11 00:13:22
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