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映画一点豪華主義

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カテゴリ:アニメ
 今年のアカデミー賞、長編アニメ賞を受賞したのはニック・パークの『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』でした。パークは同じシリーズで、過去に2度の短編アニメ賞を受賞しているので、初長編の本作も受賞するのは当然といえば当然。子供にも安心して観せられる親の強い味方、こぎれいな粘土人形の可愛いらしい動き…。

 で、今回紹介するのは、そんな一連のニック・パーク作品とは対極の作り(子供に安心して観せられない内容で、指紋が表面に残るちょっと不気味な粘土人形による不安定な動き)でありつつ、すべてがニック・パーク作品を超越しでしまった“神”のようなクレイメーション『マーク・トゥエインの大冒険』です。

 主人公は、タイトルにもなっている、作家のマーク・トウェイン(一般的な表記は“トウェイン”です)で、接近するハレー彗星に接近しようと飛行船で出発。密航したトム・ソーヤーとハック・フィン、彼らの女友達のベッキーに、トウィエンが自分の作品を語って聞かせるというストーリー。こう書くと、人畜無害のヌルいアニメのようですが、皮肉と毒に溢れ、なおかつ感動の涙を禁じえない、恐ろしいほど完成度の高い作品です。

 本作の監督のウィル・ヴィントンの名前は、30代後半以上の人なら一度は聞いたことはあるはず。彼の代表的な粘土キャラの“カリフォルニア・レーズン”を起用したクレイメーションのCMが、80年代に日本を席巻したことがありました。ヴィントンは、20代で制作したクレイメーション“Closed Monday”で第47回アカデミー短編アニメ賞を受賞。粘土をひとコマひとコマ動かす“クレイメーション”の技法で作品を贈り続けている(最近はCGも併用)、粘土アニメ界の帝王のようなヒト。

 そんなヴィントンの初長編映画『マーク・トゥエイン…』の“一点豪華”は、驚くべき粘土の流麗な動き…ではなくて、“ストーリー”です。

 粘土アニメは、その技術ばかりが評価の対象となりがちです。事実、本作も、書斎にあるものすべてが一体に溶け合って、自然と小川にメタモルフォーゼするというオープニング映像や、空や雲まで粘土で表現している点が、語り草になりがち。しかし、技術だけなら他の粘土アニメにも同等に優れたものはあります。『マーク・トゥエイン…』が表現できていて、他の粘土アニメが表現できていないものが、技術に負けないだけの“深いストーリー”です。

 こんなことを言っては失礼なんですが、『マーク・トゥエイン…』は、粘土アニメでなくとも、例えば二次元アニメであろうが、人が演じる実写であろうが、魂を揺さぶる感動作になりえるだけのストーリーを備えています。なぜなら、劇中で語られるマーク・トウェインの作品を通じて、<人生のすべて>が語られているからです。誕生、死、愛、別離、善悪、嫉み、無常、感動、悲しみ、笑い…一見楽しい笑いに満ちた映像の中に、それぞれが完璧に表現されています。その点で本作は、他の粘土アニメの追随を許さない、一段も二段も高みに上がった作品になっています。

 私事になりますが、90年代の前半、会社帰りに中古ビデオ屋をぶらついていて、“日本語吹替版”という理由だけでこの作品のVHSを買いました。ところが、本編を観てそのあまりの衝撃と感動に、ほぼ毎週、繰り返し観ていた時期があります。そして、本編中の挿話“アダムとイブの日記”で妻に先立たれたアダムの場面と、ラストのトゥエインの旅立ちで、毎回毎回ボロボロに泣いたものでした。ニューマスターで発売されたDVDで、久しぶりに観なおしたのですが、やはり昔と同様に涙が溢れて止まりませんでした。

 発売中のDVDに収録されている、ヴィントン監督のインタビューでも、監督本人が「自分の最高傑作」と評する一方、「二度とこんな作品は生み出せない」とも言っていますが、私も納得できます。技術はいくらでも進歩するでしょうが、ストーリーでこれを超えるものは今後出てこないでしょう。この作品は私の心の1本なので、一人でも多くの人に観てもらいたいです。

 ちなみに、インタビューは日本版DVDのために、わざわざ撮りおろしたものです。インタビュアーは、最近「ゴジラ3-D」のプロデューサーとして一躍有名になった奥平謙二氏。作品の根底にあるスピリッツを完璧に理解した奥平氏の鋭い質問が、ヴィントン監督から次々に興味深い証言を引き出してゆく様がすばらしい。本編のインサート映像もなく、ひたすらヴィントン氏の顔と質疑応答の声だけのインタビューが40分ほど続くのですが、退屈する暇もなく、並の映画なんかよりも断然面白いです。インタビューは、質問の“質”と、相手の本質の引き出し方で、いくらでも凄いものができるんだなあ、と改めて認識しました。巷のDVD特典の、安っぽい中身のないインタビュー映像には、ぜひ見習ってほしいですね。


1984年度アメリカ作品/87分
東京国際ファンタスティック映画祭86にて上映

監督・製作: ウィル・ヴィントン
脚本:スーザン・シャドバーン
キャラクター・デザイン: バリー・ブルース
音楽 : ビリー・スクリーム

マーク・トゥエイン(大木 民夫)
トム・ソーヤー(小野 健一)
ハック・フィン(古田 信幸)
ベッキー・サッチャー(羽村 京子)
神(富田 耕生)
アダム(嶋 俊介)
イブ(横尾 まり)

ビデオ廃盤/DVD発売中

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Last updated  2006/04/19 12:22:23 AM
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