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風狂夜話2

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2009年11月27日
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カテゴリ:天才
晩年宮本武蔵が熊本の細川家にいたとき、殿様が武蔵に向かって、うちの家来の

中でお前のメガネにかなうような剣術の極意に達した者がおるかと、訊ねた。

すると武蔵が一人だけおりますと言って、都甲太兵衛という人物を推奨した。

ところがこの人物は剣術がカラ下手で名高く、別に取り得というものも見当たら

ぬ平凡な男であった。

殿様も甚だ呆れて、どこにあの男の偉さがあるのかと訊いてみると、本人に日頃

の心構えをお訊ねになれば分かりましょうという武蔵の答えであった。

そこで都甲を呼び、日頃の心構えというものを訊ねてみたのである。

太兵衛は暫く沈黙していたが、答えて、自分は宮本先生のおメガネにかなうよう

な偉さなど持たぬが、日頃の心構えといえば一つだけ話すべきことがあります。

元来自分は剣術が下手で、また生来臆病者で、いつ白刃の下をくぐるやも知れぬ

と夜も心配で眠れなかったものです。とはいえ、剣の才能もなく、剣の力で安心

立命をはかるというわけにもいかず、結局、いつ殺されてもいいという覚悟が出

来れば救われるのだということを確信するに至った。そこで夜眠るとき顔の上へ

白刃をぶら下げたりして白刃を恐れなくなるよう様々な工夫を凝らしたりした。

そのおかげで、近頃はどうやら、いつ殺されてもいい、という覚悟だけは出来て

夜も安眠できるようになりました。これが自分のたった一つの心構えであります

と言ったのである。

すると傍にひかえていた武蔵が言葉を添えて、これが武道の極意でございます、

と言ったという話である。

のちに都甲は重く用いられて江戸詰めの家老までなった。そして大きな手柄をた

てたという。あるとき殿様が登城のおり、他の殿様に、庭ぐらい一晩でできると

威張って言ったらしい。するとその相手がそれでは今晩ぜひ作ってみせろと、

揚げ足をとったらしい。殿様は蒼くなって藩邸に帰り、都甲に事情を告げた。

都甲は宜しゅうございますとはっきり請合った。一晩数千の人夫が出入りした。

そして翌朝になると、一夜にして鬱蒼たる森が出来上がっていたのである。

宮本武蔵は剣に生き、剣に死んだ男であった。

いつ殺されてもいいとは言っても、まず勝つということが第一である。

自分より修業をつみ、剣に力のある相手に勝つにはどうすればいいか。

あらゆる場面で、相手の心理や構えのスキをついて勝つ、利用できるものは何で

も利用する。剣だけが武器ではない。

ついに剣法には固定した型というものはないと、武蔵は喝破した。相手に応じて

常に変化するというのが彼の考えで、型にとらわれた柳生流を非難していた。

わがイチロー選手の変幻自在なヒット打法もこれに似ている。イチローもまた、

武蔵のようなあらゆる変化に対応する努力の天才である。





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最終更新日  2009年11月27日 17時49分13秒
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