JEWEL

2016/05/08(日)20:39

麗しき皇太子妃 第13話:夜這い

完結済小説:lunatic tears(290)

「ミズキ、お祖母様の事は・・」 「いえ、いいんです。」 ひとしきりルドルフの胸に顔を埋めて泣いた後、瑞姫は無理に笑顔を浮かべた。 「検査の結果ですけど、妊娠・出産には問題ないようです。」 瑞姫の言葉に、ルドルフは彼女を抱き締めた。 「そんなに無理しなくていいぞ、ミズキ。この事は父上達に報告しておく。それよりも、マリサに何を言われたんだ? 君が訳もなく彼女に暴力を振るうとは思えない。」 「実は・・」 瑞姫はルドルフにマリサから処女だということで馬鹿にされた事を言おうかどうか迷ったが、恥ずかしくて言葉に出来なかった。 「彼女の事はわたしに任せろ。ミズキ、この後予定はあるか?」 「いいえ、ありませんけれど・・」 「じゃぁウィーン観光にでも行くか。嫌な事は忘れた方がいい。」 ルドルフの言葉に、瑞姫は嬉しそうに頷いた。 その後2人は、王宮を抜け出してウィーン市内を観光した。 「ミズキ、わたしが勝手に君を連れ出して不快な思いをさせてしまったことは、済まないと思う。」 「そんな・・謝らないでください。わたしが決めた事ですから。」 昼食を取りに行ったレストランで、瑞姫はそう言ってルドルフを見ると、次の言葉を継いだ。 「大学の事ですけれど、ウィーンに来る前学務課の方で留学届を出しましたし、先生方にも事情を説明しました。これから忙しくなりますけど・・」 「そう、じゃぁ今日のように2人きりで過ごせる時間は余りないという訳だね。」 ルドルフは溜息を吐いて、瑞姫の手を握った。 「これから結婚に向けて君の事を悪く言う輩が居ると思うが、聞き流してくれ。わたしは君しか妻に望む女性は居ない。」 「はい・・」 初めてのデートは、ゾフィー大公妃から受けた仕打ちで折れそうになった瑞姫の心が、少し癒された。 「おやすみなさい。」 「おやすみ、ミズキ。」 瑞姫と別れ、スイス宮の自室へと向かったルドルフは、シャワーを浴びて夜着に着替えて寝室へと向かった。 寝台に入って数分もしない内に、彼は眠りに就いた。 瑞姫は忍び足で、スイス宮へと向かっていた。 彼女が纏っているのは、胸元が強調された黒いレースの夜着で、膝丈の裾からは美しい足が太腿まで露わになっており、黒のミュールが出す甲高い音は、最上級の絨毯が吸収してくれ、誰も彼女が廊下に居ることに気づかない。 だからと言って油断は禁物だ。 瑞姫はそろりそろりとスイス宮にあるルドルフの執務室の扉を開けると、その奥にある寝室の扉にそっと触れた。 それは、軽く押すと難なく開いた。 「お・・お邪魔します・・」 そろそろとルドルフの寝室へと入ると、彼は天蓋付きの寝台ですやすやと寝息を立てていた。 (睫毛長いなぁ・・) 瑞姫はルドルフの寝顔を間近で見ながら、金色の睫毛にそっと触れようとした。 その時、微かな呻き声とともにルドルフがゆっくりと蒼い瞳を開いた。 「そこで何をしている?」 「あ、あの・・」 胸の上が重苦しいと感じたルドルフが目を開けると、そこには少し透けたレースの夜着を纏った瑞姫が乗っかっていた。 「あの・・わたし・・」 瑞姫がこんな格好で寝室に忍び込んだ目的など、考えずとも解った。 「夜這いに来たのか?」 「だって・・ルドルフ様、処女は相手になさらないと・・」 「あの女の戯言を真に受けるな。それに・・わたしが本当に処女を相手にしないかどうか、試してみないか?」 そう耳元でルドルフに甘く囁かれ、瑞姫は頬を染めた。 「え、あの・・」 「その為に来たんだろう?」 「それは、そうですけれど・・」 ルドルフは口端を歪めて笑うと、瑞姫の腰にそっと爪を立てた。 「やぁ・・」 瑞姫が甘い喘ぎを漏らすと、ルドルフはそのまま自分の方へと彼女を抱き寄せた。

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