カテゴリ:日々のまにまに
あたしはきっと、TOKYOに出てきてから、ずっと何かを見ないようにして、感じないようにして歩いていたんだろう。 もう世のすべての恋やキラキラは、自分に無関係な出来事だと、そう思い込んでいた。 だって、手に入らないと思っていたから。 ダーリンしかもう、好きになっちゃいけないって、心を抑え込んでいたから。 だけどこの奔放の申し子のようなあたしが、そんな風に自分を抑圧しちゃってたなんて、改めてダーリンの影響力の強さを思い知る。 彼の魅力、経済力、行動力。今でももちろん、尊敬してるけど。 そのせいなのか、なんとなく居るだけで人の生気を奪ってしまうようなTOKYOという街の磁場なのか、あたしはがんじがらめの籠の鳥のように、さえずることさえ義務だと思っていた。 そして。 それを不思議だと思うこともなくなっていた。 ひとはそれを、もしかしたら呪いというのだろう。 そして、自分が自分にかけた呪縛からは、ひとはそんなに簡単に、逃れることはできない。 鈍感でいた自分は、閉じている分傷付かなかったし、安定していたように思う。 だけど、それじゃ目をつぶって街を歩いてるかのようだったろう。 感性を殺してしまっていたんだろう。 思い出した。 あたしはそうだった、こんな性格だったんだ。 貪欲で、欲しいものは我慢できない、どうしても欲張りな女だったんだ。 うまく言えないけど、終わったかも、なんて思ってた恋が再燃するのに、時間はかからなかった。 毎日のメール。 日に日に親密になっていく内容。 少しの時間でも、空いていればお茶をしたりした。 だけどほんとに、それ以上のことは何も、求めていなかったの。 夏で。 浮かれてて、楽しくて。 それだけで、満足だった。 だけどいつしか、求めていたんだろう。 あたしじゃなくて、彼がね。 あの夜。 気持ちよく酔っ払って。 オーガニックワインの瓶を片手にげらげら笑いながらうちに帰ってきたふたり。 彼はさりげなく、だけどほんとはきっとすごくためらいながら、あたしの手を握った。でも、それだけ。 まるでティーンエイジャーみたいに、不器用に近づきあったふたり。 ベッドにたどり着いたのは、さらにその次のデートだった。 こうして始まってしまった恋が、いったいどこにたどり着くのか。 熱帯夜はまだ、はじまったばかりなのかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.08.14 17:47:26
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