第147話 快適な空の旅 その2.
もう大陸抜けちまったのか・・・本当早いな。 「はぇえな……普通陸路を使って通ってくとマルス城からココまで来るだけでも最低でも4・5日はかかるもんだがな」 「そうだねぇ、やっぱり遮る物もないし、スピード出てるから早いねぇ。これなら・・・そうだねぇ……後2日もあれば余裕で暗闇の丘まで到着しちゃいそうだねぇ」 「そうね、それに付け加えるなら空というか、これだけの上空にいると海や陸地と違って魔物が襲ってこないっていうのも要因としてはあるでしょうし、楽でいいわよね」 「んだんだ、それは確かにあるな。空を飛ぶ魔物って言っても、ガーゴイルとかコカトリスも飛んでもせいぜい高度数百メートルくらいだもんな。こんな雲の上まで飛んで移動するやつなんていねぇし」 特に人型の魔物が雲の上を飛ばないっていうのははっきりとした理由があるって聞いたことがある。 確か聞いた話だと、雲の上にいると自分達の獲物(人間)の発見が遅れてしまうから、とかそんなんだって。 こんな他愛もない話をしながらのんびりと過ごしてた俺たちだったんだがな? 前方を飛ぶ、何か黒い物体が視界の中に入ってきたんだよ。 「ん、何だありゃ?」 「何かしらね?形からして鳥、じゃなさそうだし。ゴミ袋?いやいやいや、あんな大きなゴミ袋ないし、何よりこんな高空に飛んでるはずないものね」 俺たちはその黒い空飛ぶ何かを目を凝らしてみてたんだが、ドンドンその物体との距離が近付くにつれ、それが何かの生物であることに気付いた。 それはボロボロの真っ黒い大きな翼を広げ、俺たちの乗る飛空挺と同じくらいの速度で空を飛ぶ魔物っぽく見えるわけだが‥‥ 「何だろうね?あの生き物」 「さぁ?見たことねぇな、あんな生き物」 「何だか気味悪いわね」 「あ、あれは!?」 「知ってるのかナディー!」 その目の前を飛んでる謎の物体を驚愕の表情を浮かべ見つめたナディー。 その表情からただならぬ存在だというのはわかる。 「私も古い文献で見た程度の知識しかないから確証は持てないんだけど」 そう言ってからゴクリ、のどを鳴らしたナディー。 「あれははるか昔、うん、確かルシファーの存在してた時期と同じ頃に存在し、当時は空の王者なんて言われてたデスゲイズっていう魔物のはずだよ」 「デスゲイズ・・・何だってそんな昔のやつが今ここにいんだよ」 「うわぁ・・・何あれ、見れば見るほど気色悪い生き物ね」 「何だかあのデスゲイズって魔物から、凄い禍々しいオーラを感じるよ」 「もしかしたら、どこかでルシファーと同じように封印されてて、ルシファーの封印が解けた時に一緒にその封印が解けたのかも」 本当、見れば見るほど気味悪いやつだな。あんま相手したくねぇが・・・ 「なぁ、あれって突然襲ってきたりとかしねぇよな?」 「どうだろ、私も詳しい事は分からないし、なんともいえない、かな」 「触らぬ神に祟りなし、こんな言葉もあることだし、放っておけば危害は加えてこない。そう信じたいわね」 俺たちはそのデスゲイズの動向に注意しながらそいつの横を通り過ぎたんだが、よかった・・・とりあえず向こうから攻撃はしかけて・・・ そう思ってホッと胸をなでおろそうとした瞬間だった。 デスゲイズは急にスピードをあげ、俺たちの飛空挺の横にペタリと張り付くように並走し始めてきた。 第147話 快適な空の旅 その2.終わり 第148話 空の王者 その1.へ続く