第52話 呼ばれて飛び出て? その1.
「そこにいるんでしょ?出てきなさい」 鋭いまなざしである一点を睨みつけた天音のその先から男の声が聞こえてきた。 「おや、ステルスモードにしていましたが見つかってしまいましたか」 「レーダーには映ってないでしょうけど、あたしの位置からあんたは丸見えなのよ」 「油断してるのを後ろから攻撃しようと思っていましたが失敗してしまいましたね」 「何言ってんのよ。そんなつもり最初からなかったんでしょ?」 「ふふ、それはどうですかね」 そんなことを言いながら物陰から出てきたのはムハンマドの搭乗する機体だったわ。 「あんたがここにいるってことは、そういうことよね?」 「えぇ、ケレスさんから見張りを頼まれましてね」 「見張りってあんたクェーサーとプレアデスが通り過ぎてるのに何もしなかったじゃないw」 「別に見張れとは言われましたが、迎撃しろとは言われていませんからね」 「何よその屁理屈wそんなんで大丈夫なの?」 「問題ないですよ。ここで貴女を倒してその首を差し出して、戦ってる最中にクェーサーとプレアデスは取り逃してしまいました、と言えば」 「何?このあたしとやろうっていうの?」 「そうですね、ここでマリネリスと戦って恩を売っておくのも良いかと思いましてね」 「正直同じ人間だし、戦わずに済むならとは思ってたけど、そんなのは甘い考えだったみたいね。いいわ、あんたの相手してあげる」 「わたくしも舐められたものですね。貴女のような小娘にわたくしが後れを取るとでも?」 「はっ!あんたこそそんな風に胡坐かいてると足元救われるわよ」 「そのようなことがあるわけないですよ。ふふ、パイロットとしての歴も貴女よりも長いですし、乗っている機体性能も今貴女の乗っているそれよりもわたくしの乗っているケイオスの方が数倍高いのですよ?万が一にも貴女の勝ちはないです」 「そんなのやってみなきゃわかんないわよ!いっくわよぉ!」 先手必勝、天音は頭部パーツを引き抜くとそれを上下に2つにくっつけ、巨大なビームサーベルにして一気にムハンマドの乗るケイオスへ向けて間合いを詰めていった。 「遅いですね、やはりその機体ではその程度のスピードが限界のようですね」 天音の振るった攻撃を軽く避けると零距離でムハンマドはビームガンを発射してきた。 ドーン!! 「くぅ・・・」 流石にド密着状態で撃たれては避けられるはずもなく。 「流石に今のは・・・でも、こんなんで怯んでる場合じゃないわ!お返しよ!!」 サーベル状にしていた持ち手を組み替えてライフルのようにすると、そこから一気に高火力のダブルビームライフルを発射させた。 「逃がさないわよ!」 距離を離そうとしたムハンマドのケイオスに対してサーベルで追い打ちをしかけた天音だったが…… 「直撃を受けるわけにはいきません」 天音の攻撃はケイオスの表面装甲を微かに傷つけただけだった。 「ふむ・・・小娘だからと甘く見ていましたが・・・これは本気を出さないといけないようですね」 距離を開けたムハンマドはそういうとさっきまでとは比べ物にならないほどに早いスピードで天音の方へと近づいてきた。 第52話 呼ばれて飛び出て? その1.終わり その2.へ続く