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カテゴリ:秩父巡礼
第5番札所
山号:小川山(おがわさん) 宗派:臨済宗南禅寺派 本尊:准胝観世音菩薩 巡拝日:2008年4月1日 ----------------------------------------------------------------- 四番札所の貫禄ある仁王門の余韻に浸りながら、さらに南へ下る。 五番札所の名前は“語歌堂”。なんと美しい響き、字面。 万葉チックな耽美を勝手に想像して車を走らせる。 しかし、予想していたより五番までの道のりが長く、 しかも案内表示がなかなか見当たらず、ふと不安が宿る。 五番からしばらくは、自治体的には秩父市ではなく横瀬町を旅することになる。 秩父盆地の東の端に位置するこの辺りは、地形的にきっと風の吹きだまる場所なんだろう。 ましてやこの日はとても風の強い日で、車に乗っていてもその圧力をハンドルに感じる。 と、住宅地を1kmほど進むと急に視界が開け、正面には武甲山、 そして武甲山に見下ろされるように、小さなお堂が見つかった。ここが五番だ。 県道か町道かわからないけれど、舗装された道の道端に、 建てられたというよりポコッと置かれたように、 一層で非常に小ぶりな仁王門があり、観音堂を守っている。 四番で立派な仁王門に出会ったばかりだったからか、やけにそっけなく感じる。 収められている阿吽像を覗き込むと、なんだか見慣れない顔をしている。 特に阿形のほうは、しいて言えばコワモテだけれど、よくある威嚇するような表情には遠く、 どうみても笑っていて、瞬間的にブルートを連想する。 ブルートさんの門をくぐると、正面が観音堂=語歌堂だ。 至るところに近年修復された形跡がうかがえるものの、お堂としての風情はいい。 ただ、借景が住宅地なので、万葉の世界にタイムスリップすることはできなかった。残念。 というか、そもそもこのお堂自体、万葉の世界にはまったく関係ない。 これを建てた人がこのお堂にこもり旅僧と和歌の奥義を語り合ったことが名前の由来とか。 ここの観音さまは、准胝(じゅんてい)観世音菩薩さんという珍しいお方。 坐像で、幸運にも肉眼である程度確認できる距離だった。 お世辞にも美形とはいえない観音さまだけれど、愛嬌と親しみやすさがある。 美しさに満ちた観音さまもそれはそれで素晴らしいけれど、こんな観音さまも素敵。 余計に長く手を合わせてしまう。 さてご朱印。ここの納経所は、語歌堂から3分程度歩いた長興寺でやっている。 納経所へ入ると、3人ほどが並んでいた。1人待ちぐらいはあったけれど、3人は初めて。 順番を待とうとしていると、先頭にいる、 おいずる姿の男が、なにやらお寺の人と話し込んでいる。 聞きたくなくても聞こえてしまう距離なので話の内容を聞いてみると、 どうやら秩父巡礼のツアーを複数取り仕切る仕事をしている人らしく、 第○番のお寺は先代も今の若いのも話が通じず無愛想で困る。みたいな陰口を叩いている。 おいずる姿で信仰心があるようにみせかけて、 その実は観音さまを単なる商売道具にしていて、 しまいには人の悪口を平然と語る。 そんな人も三十四ヶ所のご利益にあずかれるのだろうか。 まぁいいや。人は人。自分は自分。 しかし、そのおかげで順番はなかなか進まない。徐々にイラつく。 僕の後ろにも新たな列が出来はじめる。男は周囲を構わない。 5分ほどぶちまけて、気が済んだのか、ようやく列が進む。 自分の番が終わったら追いかけて説教してやろうと思ったけれど、やめる。 なにせ巡礼中だ。人にやさしく心穏やかに。はいそうします。 人は人。自分は自分。 そういえば子供の頃、友達が持っているおもちゃがほしくて親にねだった時、 必ずそんな風に言われたっけ。 ご朱印をいただき、イラつく心を静めながら、語歌堂のすぐ前の駐車場に戻る。 仁王門をのぞくと、ブルートさんが相変わらずの顔をしている。 その笑顔が、僕の心のザワザワをスッと取り去ってくれた。 小川山語歌堂 埼玉県秩父郡横瀬町横瀬6086 tel.0494-23-4701 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008年10月20日 11時35分21秒
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