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カテゴリ:銀英伝二次創作
「フロイラインはいい匂いがする・・・」 行為が終わった後、同じシーツにくるまりながら、ヒルダのくすんだ金髪に顔をうずめた。 こうしていると想いが通じ合った恋人たちのようだが、ラインハルトは自分の気持ちを掴みかねているので、恋人とは呼べないだろう。 ならば自分達は何?とヒルダは考える。 (覇王の愛人?) しかも片思いの。 ヒルダは心で自嘲した。 それでも離れがたかった。 時を一時間程度遡る 「フロイライン・マリーンドルフ!予と結婚してほしい!」 息遣いが正常に戻ると、銀河帝国皇帝は帝国軍幕僚総監にいきなり結婚を申し込んだ。 どうやら呼吸を整える間に色々考えたらしい。 色々考えた結果がまたこれ(求婚)というのは少々短絡的なのではないか、とヒルダはちょっと照れながら思う。好きな男性から求婚されればどんな女性でも嬉しいだろうが、ヒルダの場合、義理でプロポーズされているので複雑な心境だ。 余談だが、太陽は一日の仕事を終えて沈みかけている。 二人共初心者の為、存外手間取ったらしい。 「陛下、陛下が責任をお感じになる事はございません。それより・・・あの、長居すると周囲に気付かれますので、そろそろおいとまします」 ヒルダは部屋の外に待機しているであろうキスリングやエミール、自分の従卒が不審に思うのではないかと心配しているようだ。 ラインハルトはそれを聞いて目を丸くした。 もうキスリングもエミールさえもとっくに気付いているだろうに。 (フロイライン・マリーンドルフに言うべきなんだろうか) オロオロしてるヒルダは何だかほほえましい。 こうやって甘く穏やかな時をもう少し味わいたいと思う。あの夜はただただ嵐の様に貪ってしまったから・・・・。 だからラインハルトはそれを教えずに、別の提案をした。 「もう少ししたら、服を身につけコーヒーのおかわりを持って来させるとしよう。それなら議論が白熱したと思うのではないか」 ヒルダは『本当にそうかしら』と思いながらも了承した。彼女もラインハルトとこうする時間が貴重に思えたので そして現在に至る。 「陛下っ」 髪をいじられたり匂いを嗅がれたりされくすぐったいヒルダは、シーツの中でラインハルトの方へ向かい合った。 顔を赤らめ困り顔のマリーンドルフ伯爵令嬢を見て、皇帝は破顔した。二人共どうみても公的な顔ではない。 ヒルダはため息をひとつつくと、口を開いた。 「陛下はそのままお休み下さいまし。わたくしはそろそろ戻りませんと・・・・・」 オレンジ色と闇色混じり合っている空を窓越しに見上げる。明かりを点けてないこの部屋も、結構暗い。ヒルダはシーツを巻き付けて上体を起こした。 「ではそろそろ偽装工作をするとしようか」 ヒルダがまた顔を赤らめた。 (今日の陛下は意地悪だわ) 賢明にも口には出さなかった。 身支度を整えた頃、エミールがコーヒーを持って来た。 罪悪感を伴いつつ、ヒルダもラインハルトも平静を装った。 ちなみに彼が尊敬する二人共、あまり演技が上手とはいえなかったらしい。 コーヒーを給仕したエミールは、退室後笑いを堪える事に苦労した。 なんとほほえましい恋人達だろうと。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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