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2004.04.25
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明日は東京での長期出張を終えてカナダに帰るのだが、会社の同僚を誘い合わせて米軍横須賀基地で開催される10キロのマラソンレースに出ることにした。

ほんとうならこのレースのメイン種目であるハーフマラソンに出場したかったところだが、オイラが誘った会社の同僚たちが「ハーフなんてとてもムリ」というので、みんなで申し合わせて10キロのレースに申し込んだのだった。

じっさいオイラの把握する限り、社内でマラソンレースに出たことのある社員は米大卒のFさん一人だけである。今回はオイラが北米に帰国するということで、Fさん以外にも「フィットネス・クラブで週末に2-3キロ走っている」とか「昔、若い頃は走っていた」という同僚や上司7名をもちょっぴり強引に誘って、この大会に申し込ませたのであった。

毎日のジョギングでふつうに10キロを走っているオイラとしては、レースでハーフではなく10キロを走るということに少々物足りなさを感じていたのだが、同僚がみんな10キロのレースを走り終わったあとで自分ひとりだけハーフを走ってもツマんないので、高校時代以来はじめて10キロのレースを走ることになったわけである。まあ、ハーフやフルのマラソンと違って完走ではなくタイムを目的として全力で走るのもよい経験になるだろうし。

朝、ウォームアップと称して悠長に2-3キロのジョギングをしてから滞在先を出たオイラは、会場に受付の時間ギリギリに到着してしまい、5000人あまりの参加者の群れの中に会社の同僚を見つけることが出来ないまま、ストレッチをする時間もなくスタートラインに着かざるを得なかった。
あとはもう、「目標タイム45分以内」と書かれたカンバンの前に並んだ市民ランナーの流れに身を任せ、自分の体調と相談しながら全力で走るのみである。

ハーフやフルマラソンと比べて、10キロレースが明らかに違うのは、ランナーたちが最初から荒い息遣いで走っていることである。

オイラはフルやハーフマラソンの時は、だいたい「吸う・吸う・吸う、吐く・吐く・吐く」の“3回吸って3回吐く”の呼吸のペースを目安にすることで、最後まで息が切れない走りを心がけている。
ところが、「完走」できることが疑う余地のない大前提である10キロレースの場合、みんなスタートしてまもなくゼエハアいいながら走っているのである。最初から全力で、とにかく息が切れるまで速いペースを維持し、余力を残すことなくゴールするというのが10キロレースの醍醐味らしい。

オイラはとりあえず「吸う・吸う、吐く・吐く」の“2回吸って2回吐く”の呼吸のペースを維持して、周囲のランナーたちについていくことにした。周りの人たちが「ゼエハア」のペースで走っているのだから、「吸う・吸う、吐く・吐く」のオイラであればこのペースを維持できないはずはない。
…それでもふと心拍計を見たら、170拍/分を超えていた。オイラは日頃の練習ではだいたい140台を目安にしていて、フルマラソンのレースで150~160拍、ハーフのレースで160~170拍/分で走っているから、日頃はめったに経験することのない鼓動の速さである。

だいたい5キロくらいからペースが維持できず落伍していく人たちが出てきた。一方で、フォームも乱れずに安定したペースを維持しているランナーもいる。オイラは多少ムリをしてでも、この後者の人たちにおいていかれないようにした。中年の筋肉は、6キロを過ぎるとバネを失いもはや大きなフォームでは走れない。だから小さなフォームで脚の切り返しを速めてピッチを上げ、スピードを維持する。それでも7キロを過ぎるとさすがにツラさが増してきて、テンションが緩んだ瞬間に「…もうあきらめて歩こうか」などと心中の悪魔がささやくが、ここで誘惑に負けては元の木阿弥。頭を空っぽにしてただ前のランナーに着いていく。

残り2キロくらいでペースをちょっと上げようか…などとさっきまで考えていたが、8キロのカンバンに気づかないうちに「あと1キロ」のカンバンまで来てしまった。いずれにしても、もう今さらこれ以上ペースを上げる余力はオイラには残っていない。安定したフォームで走っていた周囲の何人かのランナーが、若干ペースを上げてラストスパートにかかったのが分かった。

…で、残り500メートルのコーナーで、オイラより10歳くらい老けていそうなオッサンに抜かれた。「もう死んでもいい」くらいの激しい息遣いで、疲労に乱れたフォームで必死に走っている。まさにこのレースに「命を賭けている」といった真剣さである。
ゴールまであと200メートルの直線で、オイラはふと自分が「このオッサンの背中を見たままゴールすべきではない。」と思った。
…で、自分の身体と相談しながら徐々に全身の筋肉に力を入れると、まだラストスパートの余力が残っていた。「100メートル全力疾走」時の8割程度のスピードは出ていたと思う。ゴール付近の応援の人が「…スゴーイ…!」と言ったのが聞こえたような気がした。もはやこれ以上スピードの上げようのない前を走るオッサンにはすぐに追い着いたが、さらにもひとつ前のランナーには追い着かないままゴールした。

ゴールしてすぐ、高校時代以来経験したことのなかった「地面に倒れ込んで“大の字”に寝転がりたいような疲労」を感じたが、大人げないのでやめた。ただ、ここ数十年経験したことのないくらい息がゼエハアしていた。心拍計を見てみると、タイムは42分50秒少々で、平均心拍数がなんと180拍/分!平均で180ということは、ゴール時は190くらいあったということか。平常時の心拍数が60くらいで40歳近い人間にとって、これはハッキリ言って「危険閾」の心拍数である(笑)。

それでも、高校時代の毎年恒例の10キロマラソン大会ではたしか自己記録が50分を切れるか切れないか程度だったことを考えると、その後の人生20年を経て7-8分(約1.5キロ)も早くゴールできたというのはちょっぴり感慨深い。

ゴール付近でうろうろしていると、むかーし800メートルの学校代表だったという上司Aがオイラより10数分遅れでゴール。さらに制限時間の1時間10分まで待ってみたが、上司A以外の同僚の姿が見えない。
同僚の一人にケータイ電話をかけてみたところ、同僚たちはみな受付付近の芝生でくつろいでいた。

話を聞くと、なんと同僚7名のうち3人の女性と一人の男性は10キロではなく「5キロレース」に出走し時間内完走を果たしていた。ずるーい。唯一の“習慣ランナー”である20代のFさんも目標の45分を切ってゴール、そして上司Bは事前から懸念のあった膝痛で「3キロリタイア」だったそうな。

とりあえず「言いだしっぺ」としてそれなりのタイムでゴールできて同僚への面目も立ち、満足のレースであった。





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Last updated  2004.04.27 16:08:46
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