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カテゴリ:マラソン/山/トライアスロン
いま、アコンカグアに入山してからの食事の計画を練っている。
スーパーもコンビニも、冷蔵庫もレンジもなければ、自動車類のアクセスもできない山の中では、食べられるものにたくさんの制約が出てくる。 たとえば、こんな制約である。 - 腐らない保存のよい物: 山の中には2週間もいるので、せっかく重いのを持っていっても、肉類はもちろん野菜・果物などはすぐに傷んだり腐ってしまう。せいぜいリンゴやオレンジを数個持っていける程度か。いっぱい持っていっても、テントの中で凍ってしまうし。 - あまり重くない物: 2800m地点の登山口から2~3日くらいで到着する4200mにあるベース・キャンプまでは160ドル出せば荷物の一部をロバに乗せて持っていってもらえるが、それ以降に数箇所あるハイ・キャンプ地までの高度差約2000mの間はすべて自分で荷揚げしなければならない。それを考えると、缶詰やレトルト食品といった重くなる保存食を持参するのは自殺行為になる。そもそもベース・キャンプ以降の寒さでは缶詰もレトルトも凍ってしまうし。 - なるべく栄養価が高いもの: ただでさえ寒くて酸素の薄いところに、重い荷物を背負ってさらに高い標高に登るエネルギーを考えると、いくら軽くて保存が利くからといってウェハースやポテトチップみたいなスナック菓子ばかりを持っていっても栄養にならない。熱及びエネルギー源になる、米やパスタみたいないわゆる「主食」となるものが不可欠である。通常であれば生鮮食料品で摂取しているビタミンの類はサプリメント剤で補うしかないか。 ...とまあ、そういった観点からいろんな食品を吟味した末、安易に「やっぱり熱湯で戻して15分で出来る、フリーズドライ食品を大量に買っていくしかないかな~」...などと考え始めていたオレであったが、先日ためしに買ってきたフリーズドライ食品の注意書きを読んでいてある重大な盲点に気づいた。そう、標高4000~5000m以上の世界では、フリーズドライ食をお湯で戻すのに必要な気圧が足りないのである。 まず、熱湯がそもそも100℃に達しない。日本にある標高2000m台の山でも80℃くらいで沸騰してしまうというではないか。ふつうの標高なら15分で調理できるフリーズドライ食品も、標高が1500m上がるにつき調理時間が倍々になるという。アコンカグアのベース・キャンプ程度の高度でさえ45分~1時間くらい掛けないとフリーズドライ食は調理できないのだ。これでは燃料をいくら持って行っても足りない。きっとイモやニンジンといった保存のよい根菜類を持っていっても、この高度では「半茹で」にしかならないんだろう。 要するに、上記の数々の制約に加えて、 - 気圧が低くても調理可能なものという観点も考慮に入れないといけないのだ。 アコンカグアに登った人たちの登山記録や山行ブログを見ても、大半は登山ツアーで登っていて現地人シェルパやガイドが調理を担当しているので、食に関する記述は非常に少ない。そのような数少ない東西のアコンカグア登山者の記録を読んだ限りでは、かなり「パスタ」に依存していた様子が大きい。細い・薄いパスタ類を持参し、時間を掛けて煮込んだ末、粉末スープをその煮汁で溶いてパスタ・ソースの代わりにし、茹でたパスタにかけて食べる...という、あまり食欲の湧かない食事の情景が目に付く。 日本人登山者の場合は「アルファ米」だ。少なくともベース・キャンプの高度であれば調理できていたようだ。ベース・キャンプで炊いた米でオニギリを作り、さらに標高の高いキャンプに持参したという記述があったが、これはアルファ米でもベース・キャンプの高度が限界ということだろう。...いずれにしても、アルファ米はカナダでも地元アルゼンチンでも手に入らないし、考慮からは外さざるを得ない。あとは「インスタント・ラーメン」を食ったという記述も多いが、オレはよほど体調のよい時でないとインスタント・ラーメンで簡単に下痢をする体質なので、これは最初から却下である。 最後の頼みは、ベース・キャンプに常設されている「レストラン・テント」だ。ヘリコプターやラバで運んできた食材で作ったハンバーガーやコーラなどを出してくれるらしい。ただし価格はハンバーガーでも2000円(!)とか。輸送費用が価格のほとんどを占めているということか(笑)。これは最終日などに登頂祝いとして食う分にはいいが、とても毎食ここで食ってたらカネがいくらあっても足りない。...っつーか、オレが下山してくる時期にはこのレストラン・テントもシーズン終了で撤収しているらしい(笑)。 簡潔に言えば、アコンカグア入山中の2週間はロクな食い物が食えない、ということだ。 ちなみにこの事実を認識したオレはすっかりアスリート・モードというかサバイバル・モードに入り、この2週間はアイアンマン・レースなんかで使用したエネルギー・ジェルやスポーツ飲料などのサプリメントに依存することを覚悟し、それらの粉末剤を大量に手配することにしたのであった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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