命を育む教育へ!
この章は子供の教育に半生をかけた、教育者鎌稲蔵氏の現場を通して歩まれた貴重な体験エッセー集でございます。
ご本人のご許可を受けて此処に謹掲させて戴きました。普段の教育のご参考になれば幸いです。
光明思想 生命の實相哲学の実践編です。
盆栽でよく用いられる言葉に、「松のことは松に聞け」というのがあります。松にも、落葉松、五葉松、赤松、黒松などさまざまな種類がありますが、この言葉の意味は、松をじっと見つめていれば、その松が葉水を要求しているのか、根の水はけを望んでいるのか、声にならない声が聞こえてくるというものです。これは何も松に限りません。観葉植物などの場合も同じで、愛情をもって育てている人には、今、植物に何をしてあげればいいのかが、自然に分かってくるようです。さらに言いますと、こうしたことは、子供を育てる場合にもあてはまります。私が中学校の教師をしていたころに心がけたのは、ともかく子供の様子をじっくりと見ることでした。すると、それだけでも子供たちは「先生は自分のことを気にかけてくれている」とうれしがったものです。その上で私か努めたのは、〃聞き上手〃になること。子供が「こうなのよ、ああなのよ」と言ってきたら、まず「そうかそうか」と相づちを打って受け入れ、聞いて上げることがきわめて大事なのです。私の所に教育相談に来る親の中には、子供が稚拙ながらも何かを訴えようとしているのに、すぐ子供に代わって答えてしまう人をよく見かけます。これなどは、先ほどの松に例えると、松が何を求めているのかをよく分かろうとせずに、自分の思いこみで、やたらに水を上げたりすることに似ていると言えるでしょう。大人が勝手に価値判断をする前に、子供が何を言おうとしているのかにゆっくりと耳を傾けること、つまり〃聞き上手〃になって、さらに認め、褒めてあげることが子供の教育のポイントです。〃聞き上手は育て上手〃--この言葉を忘れずに、子供に接したいものです。