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カテゴリ:新型コロナウイルス
新型ウイルスの拡大に思う㊦ 麻布大学名誉教授 鈴木 潤さん
笑みを絶やさず前向きに生きる 祈りと励ましが免疫力を高める 現在は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、一人一人の行動は制限されている。 しかし、その中でも学会の同志は、皆が「今できること」を懸命に考えながら、一日も早い終息を祈り、周囲に励ましを送っている。そうした活動は、「共助」「利他」の心を世界に広げる行為にほかならない。そして私たちの地道な活動は、免疫学の観点からも、免疫力を自他ともに高めるものだと感じている。 その一つが「笑い」の効能である。 「がん」を例に挙げれば、笑いによる脳への刺激が免疫機能を活性化するホルモンの分泌を促し、通称「殺し屋」の異名を持つ「NK(ナチュラルキラー)細胞」が活性化する。NK細胞は、常に体内をパトロールし、がん細胞を見つけると殺す役割を担う。つまり、「笑う」ことは「がんになりにくくする」ことにつながるのである。 周囲を笑顔にする私たちの励まし、また困難に直面しても〝笑みを絶やさず前向きに生きよう〟とする私たちの生き方にも、免疫力を高める同様の効果があると考える。 実は、細胞に含まれる遺伝子解読に関して、こんな話題がある。 これまで「有用」(トレジャーDNA)されていたのは、たった2%。残りの98%は、何の働きもしない「ゴミ」(ジャンクDNA)とされていた。ところが急速な技術の進歩で未知の領域の解読が進んだ結果、「ゴミ」といわれていた中に〝病気から身体を守る特殊なDNA〟や〝私たちの個性や体質を決める情報〟があることが、次々と明らかになってきたのだ。ここには、健康長寿を実現したり、誰もが潜在的な能力を発揮したりするヒントもちりばめられている。 日蓮大聖人は「法華経開目抄」で、南無妙法蓮華経の「妙」の字に込められた功力を「開の義」「具足・円満の義」「蘇生の義」の三義として説かれている。 この「妙の三義」に、現代の免疫学の知見を重ね合わせると、次のように展開できると考える。 第一に「開の義」について、大聖人は「妙と申す事は開という事なり」(御書943㌻)と仰せである。これは、法華経こそ諸経の蔵を開く鍵であることを明かされたものであり、ひいては妙法には人間をはじめ、あらゆる生命の持つ可能性を開いていく力があることを示された御文である。 生命には、本質的に「開」という特性がある。 私たちの身体を構成する何十兆もの細胞は、その一つ一つの間で、例えば〝落ち着いて〟と伝える制御性T細胞など、さまざまなメッセージに応じて、必要な合成や変化を起こすからこそ、私たちの身体の調和は保たれているのである。 そこで大事なことは、そうしたメッセージを受け取れるように、ほかの細胞に対して〝常に開かれた状態〟にあるということである。 この「開」という本質は、細胞核にあるDNAにとっても変わらない。なぜなら、細胞の中にメッセージ物質が取り込まれた時、必要に応じて〝眠っていたDNA〟が発言するからである。 また、第二の「具足・円満の義」とは、妙法に一切の功徳が欠けることなく具わっていることを指す。細胞レベルで考えると、前進の細胞の一つ一つには、病気を治す力など、あらゆる可能性を秘めた遺伝子情報が潜在的に具わっていることを指示している。 さらに、第三の「蘇生の義」とは、妙法には万人に生きる活力を与え、みずみずしく蘇らせる力があること。これは、一つ一つの細胞の中にある遺伝子の働きによって、細胞の代謝が始まっていくことを意味している。 その上で、重要なのは〝眠っていたDNA〟のスイッチを入れていくことであるが、興味深いのは、それぞれの分野で最先端の研究を重ねる学術部員と語る中、〝私たちの励ましや祈りは、遺伝子に働きかける力を持つ〟等と指摘する人がいるということである。 現代は交通手段などの発達によって、新型コロナウイルスの広がりは、従来の感染症に比べて格段に速くなった。 しかし一方で、インターネットの普及に伴い、メールやSNSなどを使って、瞬時に励ましを送れるようになり、動画などを見て語り合うこともできる時代になった。どこにいても、距離の壁を越えて希望を送れる時代となったのだ。 感染症と戦ってきた人類の歴史を踏まえれば、これからも、新種のウイルスが人類に脅威を与えるかもしれない。だからこそ励ましを通して共助や利他の心を広げ、祈りによって自らの生命を強くする私たちの信仰が、社会の希望の光となっていかなければならないとの思いを強くしている。
【学術部からの寄稿】聖教新聞2020.3.28 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 2, 2021 04:01:37 AM
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