市に虎有り
市に虎有り古代中国の説話「市に虎有り」。魏の忠臣・龐(ほう)葱(そう)が、人質として趙に向かう王子の随行を命じられた時のこと。自分の不在中の讒言を心配した龐葱は、王に質問する ▼「一人の者が『市場に虎が出た』と申したとして、王にはお信じになりますか」。「いや」と王。〝二人では?〟。王は「あるいはそうかも、思うだろう」。〝では三人では?〟。王は「信じるだろう」と ▼龐葱は「市場に虎が出るはずがないことは、明白です。それにもかかわらず、三人して言えば虎が出せます」と嘆く。王は真偽を見抜くと誓うが、結局は讒言にだまされ、龐葱は迫害されてしまう(近藤光男『戦国策』講談社学術文庫) ▼〝事実無根の作り話〟も、多くの人が口にすれば〝真実〟に聞こえる。日蓮大聖人は、世間を騙す嘘に対して「何れの月・何れの日・何れの夜何れの時に」(御書319㌻)と。その裏付けを鋭く問いただされた ▼新が他コロナウイルスに関して、ネットやSNSでの〝デマの拡散〟が問題となっている。煽るような言い方や電文には要注意。公的機関の発表か、科学的裏付けはあるのかなどを確かめ、くれぐれも慌てて人に伝える拙速は避けたい。「だまされない」だけでなく、結果的に人を「だまさない」よう心がけよう。 【名字の言】聖教新聞2020.4.6