マリー・アントワネット MARIE ANTOINETTE
独りになれる場所を探して早足で歩いた。こぼれないで、涙。あと少しもう少しだけ。ベルサイユに群がる着飾った貴族たちの視線。美しい扇で隠した口元が何を噂しているのか彼女は知っている。できるならもう少し子供のままでいたかった。子犬のキスで目覚める穏やかな毎日。もう二度とは戻れない日々覚悟はできているけれどバタンとドアを閉めたなら堰を切ったようにあふれ出す涙。いつも笑っていた。不安な時も寂しい時もそれがこの国へ嫁いできた未来の王妃としてのつとめだから。ひざを抱えて泣きじゃくる彼女は居場所を探してさまよう迷子の子供。傅く華やかな人々にいつも取り囲まれていても・・・。本当のマリー・アントワネットを知る人など誰もいない。 たった14歳ですよ!俗に言う政略結婚。母の命じるままにフランス王家に嫁ぐことになったマリー・アントワネットだけど末っ子の甘えん坊さんのはずの彼女がそれなりの決意をして長い旅路を馬車に揺られ独り嫁いでいく様には涙が出ました。心細いキモチもきっとあっただろうに・・・と。まだまだ幼くてコロコロとよく笑うマリー・アントワネットを演じたキルスティンが可愛いです。羽を広げて颯爽と大空にダイブ!映画が始まると、そこは思い描いていた通りの色彩と美しい風景でした。だけど景色を楽しんだらその後はいったいどこへ着地すればいいの?ソフィア監督がきっと特別の力を込めて描いたであろう冒頭で紹介したマリーが初めて涙を流すシーンを過ぎたあたりからどんどんとドキドキの加速が落ちてきてちょっぴり途方に暮れました。キモチの収まりがつかなくって・・・。もっとラストあたりのお話もドラマチックに描こうと思えば描けたはず。だけどそこはやはりソフィア流。自分の描きたいものだけを厳選チョイスで映像にしていきます。ソフィアワールドとキルスティン・ダンストのキュートさを楽しむためのビデオクリップ。そういう視点で観るべきだと気づきました。そう思って観ると、かなり完成度が高いです。音楽の使い方も新鮮だし、映像は見ているだけで夢見心地。着地点が見えないのもソフィア・コッポラの映画らしい♪ちょっと途方に暮れたりもするけど私は好きかな。こういう感じ。何を描いてもそれが歴史上の人物であってもちゃーんと最後は「ソフィア印」の映画になっている。そこがこの監督のすごいところなのかもしれません♪