テラビシアにかける橋 BRIDGE TO TERABITHIA
学校にいても家族に囲まれていても自分の居場所がどこにもないと感じたことがある? あまりにも多くのものをあきらめすぎて僕はいつしか、あきらめることに慣れてしまった。 楽しみといえば空想の世界を旅することだけ。スケッチブックに彩られた奇妙な生き物たち。絵を描いている間は一人じゃない。だけど、こみ上げるこの寂しさは何だろう。 それはちょうど一吹きの風だった。袋小路の路地で心を閉ざしかけてた僕の目の前に突然現れたのは風変わりな転校生名前はレスリー。 第一印象は最悪。一等を狙っていた僕の隣で短距離レースを軽やかに走りぬけ彼女は笑った。 自由な発想で困難も楽しいことに変えてく彼女は灰色の僕の世界をいつしか照らす温かな光になった。彼女の元気につられて僕も少しだけ笑った。笑うことなんて、もうないような気がしていたのに。 ロープで小川を飛び越える。まるで空を飛んでいるみたいに。「目を閉じて、心の目は大きく開いて」彼女は言う。それに僕は従う。 同じイマジネーションを共有できるかけがえのない友だち。森の向こうは秘密の王国。ふたりだけには見える美しい世界。 大切にする。君が僕にくれたたくさんのもの。それは目をそらすことをやめてどんな試練にも立ち向かう強い心と勇気。 僕はもう逃げない。ちゃんと居場所を見つけたから。 君がいつもそばにいてくれるから。 CGを多用した不思議な生き物が出てくる愛と冒険の感動のファンタジー? 映画を観るまでは、そういうイメージでした。でも実は違った。ファンタジーでさえ、ないような気がする。これは、なかなかの秀作ですよ♪あなどるべからず!(笑) 主人公の二人は世間でいういじめられっ子。子供の世界の「嫌な」しきたりにうまく溶け込んでいけない二人にとっては現実社会は厳しいことばかり。 だけど、あきらめムードな男の子、ジェスに対して転校生のレスリーはすごく前向き。「どうせいじめられるなら、楽しまなくちゃ」とニコニコしながら彼女は言う。同じ感性を感じながらも、この発想は彼にとっては、まったくの新しい風。彼女のペースに巻き込まれていくことはジェスにとっては思いの他、心地のいいものだったと思うな。 学校からの帰り、バスを降りたらかばんを放り出して近くの森へと忍び込む。小川を飛び越すための一本のロープ。その向こう側はふたりが作り上げた空想の国、テラビシアだ。 ふたりは決して、現実から逃げてその森で立てこもっているわけではないの。空想の世界でイマジネーション豊かに冒険をして現実社会に立ち向かう術をひとつずつ、ひとつずつ身につけていきます。いわばその森は強くなるためのひとつの練習場所ってとこかな? 順調に世界を広げて成長していく二人。このままできれば、物語を終わらせたかった。だけど、映画はあまりにも非情。さらなる過酷な試練が、ジェスを待ち受けていて・・・。 レスリー役を生き生きと演じていたのは「チャーリーとチョコレート工場」のアナソフィア・ロブちゃん。あの映画では、ガムをくちゃくちゃしてる生意気でイヤ~な女の子だったけどホントはめちゃ可愛い♪転校生として挨拶するシーンでは、ナタリー・ポートマンを思い出し、映画を観ているうちに、キーラ・ナイトレイともだぶりました。これは将来が楽しみな感じ♪ ジェスを演じていたのは「ザスーラ」のジョシュ・ハッチャーソン。この子は巧いです。多感な少年の心の機微を、とても丁寧に繊細に演じていました。映画が終わる頃、この子が成長したのだと本当に実感してしまったもの♪ふたりの演技がこの物語にみずみずしい息吹を与えていて素晴らしかった。 子供のとき、秘密基地を作って夢中になって遊んだ記憶が蘇る。あの時そうだとは気づいていなかったけれど私たちも、空想の世界で大人になるための練習をしていたのかな? テラビシアにかけた橋はきっと誰の心にもある。「目を閉じて、心の目は大きく開いて」見えるものだけがすべてではないことを「子供だった時の心」をいつまでも忘れずにいたい。