建築探偵桜井京介の事件簿 6 篠田真由美
・美貌の帳1996年4月。京介は杉原静音の紹介で、杉原の姪たちも孫のようにかわいがってもらっているという、伊豆の土地持ちで資産家当主・天沼龍麿に会う。後日、天沼からの招待状が届き、高校2年に編入した蒼を連れ、龍麿が経営している西伊豆のホテルへ。そこで、伝説の女優・神名備芙蓉が、三島由紀夫の一幕劇「卒塔婆小町」で復活するという。舞台で芙蓉が老婆から美女に変身。その時、龍麿が倒れ、劇は中断。その後、芙蓉と対立していた演出家・大迫が失踪、龍麿の館は業火に包まれる。また、京介の高校時代の先輩・遠山蓮三郎は、龍麿の娘・暁子と恋仲だった兄の死に不信を持ち、京介に真相解明の協力を求める。また、遠山の幼なじみで地方新聞の記者・雨沼鯛次郎の情報も加わる。そこに浮かび上がる真相とは・・・建築探偵シリーズ第二幕開幕。遊馬朱鷺も登場。ちなみに、春に京介は大学院を、深春は大学を卒業している。高校に通うことになった蒼だが、自身の背景があまりに他の生徒と違うことを目の当たりにし、なかなかなじめず、悩んでいる。心配しつつも見守るしかできなかった京介の背中を押す深春が良い。京介は昼間眠すのが好き(深春談)・・・夜眠るのが何かあるのでは?と考えてしまう。蒼は逃げずに自立できるよう努力中。龍麿は京介を娘婿に迎えようとし、それを知った蒼は動揺する。作中取り上げられる建築・建築家~ フランク・ロイド・ライトの設計で知られる帝国ホテル(現在は建て替えあり) ジョサイア・コンドル・・・鹿鳴館、東京上野博物館(インド的モチーフの混合など) ~ネタバレメモ~芙蓉の美女への変身は、息子のような付き人・村田のもの(声も)。これは、「玄い女神」を読んだ後では簡単に予想ができる。一連の事件は龍麿によるもの。龍麿と芙蓉の愛憎の歴史のなせる業だったのかもしれない。芙蓉は京介の母親の子どもの頃(当時10歳弱頃。昭和30年代半ば、現時点から35,6年前。)を知っているらしい。京介の母は京介の知る限り幸せではなかったらしい。今回、京介が蒼を連れて行ったのは、門野から連絡があり、蒼の姿を彼の母親に遠目からでも眺めてもらおうという目的があった。だが、母親の具合が悪く、叶わず。夢のような生活はいつか終わると思う京介。やはり、そのきっかけは蒼の自立にかかってくるような。どんどん不穏な空気が強まる気配。