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雪乃は立ち上がり、草取り鎌を取り出し軍手をはめた。
とにかくこの草を抜いてきれいにしよう。 そう思い、秋の陽ざしの中、雪乃はただ一人黙々と草抜きをした。 汗が頬を伝う。 腰も痛くなってきたが、雪乃は作業をやめなかった。 草にもいろいろある。 抜きやすい草、抜きにくい草、すっとまっすぐ伸びた草、横にはうように広がる草。 そんな草を一本一本丁寧に抜きながら、雪乃は思う。 この草のように、私の中から嫌な思い出が全部消えればいいのに、と。 昭のことも菜摘のことも思うたびに心が暗くなる。 しかし、 何日も続いた眠られぬ夜に、雪乃は願ったのだ。 昭と菜摘が不幸になるように、と。 菜摘も自分と同じような目にあえばいい、と。 自分はこんな人間だったのだ。 涙が汗と一緒に流れる。 おばあちゃん、ごめんね、こんな雪乃におばあちゃん、失望するよね・・・・。 時間がどれだけたったのか分からなかった。 祖母の墓の周りは見違えるように綺麗になった。 墓の前に線香を供え、菊の花を生けると、雪乃は長い間、祖母の墓の前で手を合わせた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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