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片桐早希 おむすびころりん

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2008.12.13
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 昭の視線が、落ち着きなく動く。

 昭の席から、真理奈の横顔が見えることに気づいた雪乃は、昭が真理奈に気づいて動揺して

いるのだと思った。

 結婚して渡米した真理奈が、まさか今夜同じ店にいようなどと、昭は思いもしないだろう。


 雪乃はそっと真理奈の様子を伺うが、真理奈は今までと変わりなくナイフとフォークを動か

し、

「ここには家族でよく来ていたのよ。雪乃さんと一緒に来れて嬉しい。」

と笑顔で話した。

 その時、洗面所から戻ってきた昭の連れを見て、雪乃はさっと視線をテーブルに戻した。

 その女性は、菜摘だった。

 カッカッと靴音を立てながら歩いてくる菜摘の化粧も服装も、今夜はいつもに増して派手

だった。


 菜摘が真理奈がここにいることを気づかずにいることを、雪乃は祈った。

 ドキドキする気持ちを抑えて、雪乃は真理奈と会話を続ける。


 赤ちゃんは男の子か女の子か、お医者様に聞けば分かるのだけれど、私達はあえて

聞かずにおくことにするのだと、真理奈は言った。

 雪のように白い肌、黒い瞳が輝く。


「ちょっと失礼します。」

 真理奈はそう言うと、席を静かに立った。洗面所に行くようだった。


 真理奈は昭のすぐ傍を歩くことになる。

 真理奈は昭に気がつくだろうか・・・・。


 部署は違っていたといえ、真理奈は昭の顔を知っているはずだ。

 昭が真理奈に憧れていたことは、その当時社内では有名だった。

 昭の気持ちを、真理奈は知っていたかもしれない。


 真理奈は靴音をさせないで歩き始めた。

 お腹のふくらみはまだ目立たない。

 背筋を伸ばし、真理奈は昭に近づいていく。







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Last updated  2008.12.14 18:01:03
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