カテゴリ:ガンダム
私達がファンネルという名前を聞いた時、真っ先に思い浮かぶのはオールレンジ攻撃だろう。
ゲームでお馴染み、無数の自動砲台が敵機の周囲を取り囲み、全方位から一斉射撃を浴びせて敵を容赦なく破壊する……という奴だ。 古い時代ではZガンダムのキュベレイ、2000年代ならSEEDのプロヴィデンス(ドラグーン)、2010年代ならクシャトリヤで、昨今ならエアリアルと、どんな時代でもガンダムシリーズでは代表的な武装として描かれている。 ところが、元祖ファンネルとでもいうべきビットを主兵装とするMAエルメスの場合、事情が少し異なる。 本機の当初の運用方法はオールレンジ攻撃というより、寧ろ、超長距離からビットだけを飛ばし、敵が気づく前にビットのメガ粒子砲で破壊する、という、言うなればドローン経由でステルススナイパーを担当するような、それであった。つまり、敵機との交戦を目的とした機体ではなく、一方的にアウトレンジから敵戦力の削減に努める間接砲撃系の機体だったのだ。FPSをやったことがある人なら、狙撃手をイメージして貰えれば分かりやすいだろう。 狙撃仕様のマシンというのは、隠れハイザックやらジムスナイパーやら、ちょくちょく出て来るが、それらが相手も反撃可能な距離で物陰などに隠れながら射撃していたのに対し、相手が全く応対できない超長距離から一方的に死角から精密射撃を加えるという点では、Vガンダム時代のザンネックに近い運用ともいえる。あるいは、母艦が遠距離から子機だけで攻撃する、という意味では、戦艦ザムス・ガルに搭載されていた無人殺戮兵器"バグ"の方が近いかもしれない。 実際、その効果は絶大で、地球連邦軍側は未知の兵器であるビットによる奇襲で、無数の艦船やMSを一方的に破壊され続ける羽目になった。 ……と聞くと、非常に優秀に思われるが、実際にはパイロットであるニュータイプへの負担が多過ぎてしまい、残念ながらたった一話でこの戦法は使えなくなってしまった。以下は、シャアとフラナガン博士の会話。 シャア:「わかったのか?ララァが疲れすぎる原因が」 フラナガン:「脳波を受信する電圧が多少逆流して、ララァを刺激するようです」 シャア:「直せるか?」 フラナガン:「今日のような長距離からのビットのコントロールが不可能になりますが?」 シャア:「やむを得ん、というよりその方がよかろう。遠すぎるとかえって敵の確認がしづらい」 そんな訳で、もしかすると、次代の戦略兵器になり得たかもしれないビットであったが、その欠点もまた実戦運用の中で判明し、一方的に長距離から攻撃可能なアウトレンジ兵装から、相手も反撃可能な距離で運用せざるを得ない自走砲台の類へと堕ちてしまったのであった。 勿論、だからと言ってビットが弱いという訳ではない。一人のパイロットによるオールレンジからの一斉射撃が強力なのは、ブラウ・ブロ、エルメス、ジオングの戦闘ぶりからも明らかだ。ただ、結果として対MS戦をせざるを得なくなってしまい、いずれもガンダムによって破壊されてしまった訳だが……。 残念ながら、この無人機動兵器によるアウトレンジ戦法構想自体は潰えてしまったものの、対MS戦闘におけるオールレンジ攻撃に活路を見出した結果、ビットはより小型化され、ファンネルという形でMSに搭載可能な兵装へと生まれ変わった。 そして、機体的にも武器のサイズ的にも小型版エルメスとでもいうべきキュベレイとその後発機は、このファンネルによるオールレンジ攻撃を駆使した代表的な機体だ。 勿論、キュベレイ以外にも様々な形で、サイコミュ兵装は後発の機体に受け継がれている。 ブラウ・ブロやジオングの有線サイコミュはハンマ・ハンマやドーベン・ウルフに、ファンネルはゲーマルクやクイン・マンサに。 そして、後の時代ではニューガンダム、サザビー、ヤクト・ドーガ、αアジール、クシャトリヤ、ローゼン・ズールなどに受け継がれていくことになる。 これらの時代には、もはやファンネルは主兵装ではなく、サブ兵装の一つでしかない。突出しやすい一騎当千のエースパイロットが僚機の代わり、あるいは第三の手として活用していく感じだ。とはいえ、ニュータイプの繰り出すオールレンジ攻撃をかわすのは至難であることは変わらず、ガンダムシリーズであればある種の「強さ」あるいは「貴種」の記号として、今後も様々な形で使われていくことになるだろう。 ただ、本来のビットの強みであったアウトレンジ戦法のような扱われ方は、もう見られないかもしれない。ゲーマルクなんかは設定上、そういう戦い方も出来たかもしれないが……。 閑話休題。 ちなみに、何でこんな話を急に書いたか、というと、丁度、岡田先生のガンダム講座でエルメスの話が始まったので、懐かしくなりまして。 ニュータイプの「強さ」とか「凄さ」っていうのは、人間的にはアムロやララァが示してるんですけど、「武器」としてそれを明確にしたのは、やっぱり、エルメスからだなぁってしみじみ。 丁度、「水魔女」のエアリアルもファンネルタイプのガンダムなんだけど、あれも、エルメス(あるいはキュベレイ)を彷彿とさせるよねって。色んな意味で。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023年05月25日 01時04分30秒
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