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May 31, 2007
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カテゴリ:日々のカケラ


 
 お風呂が大好きなぼくは、毎晩入る。世界には食べることさえままならない人たちがいるというのに、思えばぜいたくな話だ。毎晩入るお風呂、それだけで裕福すぎる。石けんもシャンプーも使わないぼくは、ただ湯に浸かり、麻のタオルで痒いところをゴシゴシとこする。薄いひげは、湯とカミソリがあればそれで十分だ。なのに案外時間をかけてゆっくりと入る。ぜいたくなバスタイムをさらに豊かにしてくれるものがあるからだ。それは、自分で作った蜜ろうそく。その灯りを見つめていると、足を曲げて入る狭い湯船だが、どこの温泉にも負けないほどゆったりできる。

 蜜ろうそくの灯りは、あったかい。橙色の灯りが湯気にまどろんで、ふんわりと心まであたためてくれる。何年か前に和ろうそくを灯したことがあるが、あれはいただけない。雰囲気は蜜ろうそくに負けないが、煤が出る。それも半端じゃなかった。翌朝、風呂場の壁を小一時間もかけて掃除することとなった。パラフィンのロウソクなどは、はじめから用途が違う。あれは仏壇か、停電などの非常時用だ。最近は香りや形が売りのおしゃれなロウソクも見かけるが、ぼくには無縁な話だ。というわけで、蜜ろうそくに出会った。


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 この蜜ろうそくは、蜜蜂の巣からできている。しかも純度100パーセント。山形で「ハチ蜜の森キャンドル」を営む安藤竜二さんが心を込めて精製した蜜ろうだ。葉っぱ塾のブナの森セミナーのひとときに、安藤さんの指導でワイワイ言いながらみんなで楽しんで作ってきた。ヤギおじさんが「葉っぱ塾指定の人間国宝だ」とおどけていたが、安藤さんは日本でこの人しかいないという蜜ろうそく作家なのだ。すっかり蜜ろうそくにはまったぼくは、カメラマンの後は、日本で2番目の作家になろうかなとかなり本気で思っている。

 蜜ろうそくの灯りと、これからは小窓を開けて外気を取り入れながら入ると、まさに露天風呂の気分も味わえる。秋の虫の声が、今から待ち遠しい。葉っぱ塾で覚えてきた七十二候は、今日から小満の末候、麦秋至る(ばくしゅういたる)の5日間に入るとあった。そう言えば、山里への通勤路沿いにある麦畑も黄金色に輝いていた。麦の穂が満ちて、いま熟しはじめたのだ。農のある暮らしに憧れながら、憧れだけで終わるかと思っていたこの人生だが、まずはこまやかに季節を感じ、知らないうちに身近なところから質素な美を創り始めていた。今夜も蜜ろうそく風呂に入りながら、今日一日をゆっくりと振り返ろうか。麦はそろそろ収穫の季節。ぼくの人生も秋を深めたいものだ。
  

96FT9157.jpg

 





あめつちのしづかなる日 in 北海道








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Last updated  Jun 1, 2007 10:49:30 AM
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