カテゴリ:日々のカケラ
窓を開けてまずは新鮮な空気を吸い込んだ。朝のご馳走だ。気持ちいい呼吸をしばらくしたあと、ぼくの仕事でもある布団上げ。タオルケットをパタパタ、ヒラヒラと軽やかにはためかせて一晩の汗や埃を取り払う。「おはようございます」。声がかかる。斜向いのTさんだ。2階のベランダに洗濯ものを干すのは、どうやらTさんの仕事なのかも知れない。朝のときどきにこうしてあいさつを交わしている。 Tさんは校長を最後に定年退職されてもう何年にもなるようだが、あいさつ以外は会話などしたことがない。朝のほんの一瞬のふれあいだ。「今日も暑くなりそうですねぇ」。珍しくこれにひと言加えてやった。予期せぬ二の句に、「えっ、えぇ」と、返事ともつかない応えが返ってきた。ちょっと愉快だ。 とっさの二の句には、わけがある。Tさんとの数日前のあいさつで、次はもうひと言つけ加えてやろう、と思っていたのだ。いつも同じパターンじゃ面白くない。近所とのあいさつぐらいで大袈裟な話だが、人生とは変化だ。日常茶飯事にだって、変化はあっていいだろう。 変化。変わろうとしてもなかなか変われないことも多いけれど、片時も休まずに確かに変化は続いている。ささやかな変化を楽しめるなら、やがては大きな変化をも同じように楽しめるかも知れない。人生とは、変化することだ。出会いと別れ、生まれて死んで。なにひとつも同じところにはいない。 それにしても、思い返すとますます愉快だ。「えっ、えぇ」。戸惑ったTさんの心の中が感じられるような気さえする。今度はどんなひと言を加えてやろうか。日々の楽しみが、またひとつ増えた。 めぐり愛・言葉(こころ)がつなぐ幸せ結び お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Aug 12, 2007 08:14:32 AM
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