変わらないかも!
今日はちょっと番外編っぽい感じかなあ。『ポケモンコンテストコガネ大会、優勝はハルカさんです!』歓声を浴びながら、リボンを渡される。この感触、もちろんうれしいのだが、少し慣れた気がして、それがちょっぴり悲しい。ジョウトのコンテストでも、シュウとハーリー以外にはまだ負けていない。…サオリには…まだ1度も会ってないけど、幸運と思った方がいいかもしれない。「物足りないのかい?」「シュウ!」マツザカ大会(キキョウの少し南)以来。この時もシュウにやられて、結局シュウとはコンテストで通算1勝4敗。小気味よく2つの交差した刃の擦れる音。ちょっとやかましく感じる温風発生機。粘性を持ってそうな液体が、気泡となってみるみる膨れ上がる様子。ポケモンの見た目を磨くにはこんな方法もあるって事を、ジョウトに来て初めて知った。「こんな地下街に、ポケモン専用の美容室なんてあったのね。」「…ホウエンやカントーにもあったんだけどね。まったく、そんなのと無縁だとは…」「何か悪いの!?」こんなんだからハーリーに付け入る隙を与えるんだよ…という言葉の代わりに、ひとつため息をついた。郊外の自然公園は、ジュースを堪能するにはもってこいの場所。「君は変わらないね。」「ん?」コンテストでのスタイル、ポケモンの接し方、その性格と落ち着きのなさ。そして、一息入れる目的にそぐわない、2リットルペットボトルを片手に持つ姿。「ジュース、おいしいかい?」「ええ、おいしいわよ? …あげないわよ。」「うん、分かってる。ていうかいらない。」何も変わっていない。うん。「そういえば、シュウはジョウトでライバルは出来た?」「え?」「ジョウトじゃあ、シュウとハーリーさん以外には、負ける気がしないかも。」サオリさんを忘れるな、と言いたくもなったが、やはり予想通り物足りない様子。それはシュウも同じだった。「…バトルの方でのライバルはいないのかい?ジムめぐりをしているんだろう?」「バトルだって連戦連勝…あ、でも。」ショウの事を話してみた。そういえば、なんだか名前がシュウに似ているが、聞いてみたところ親戚にもショウと言う名前はいないらしい。「典型的なダメトレーナー、ってとこだね。」「うん、でも…何か変だった。何か大きなものを抱えていそうな…」「関係ないだろう。」シュウがあっけらかんにそういってのけ、飲み干したジュースの空き缶を隣のゴミ箱に投げ入れる。ハルカはと言うと、あまりの予想外の反応にどこか金縛りを受けていた。「そんな不確定のものに気を取られ過ぎていると、いつか足元をすくわれる。 …コンテスト以外の面で意識をしてしまった相手に足元をすくわれた、僕の様にね。」「え?」シュウは焦るように立ち上がり、フライゴンを出すや否や速攻で飛び立っていった。どこか顔を見られたくなかったようにも見えたが、「…そうよね、あれこれ考えるなんて、性に合わないかも。」いつもより毛艶の良くなっているグレイシアをなでてやると、擦りよってきた。最後にポンポン、と軽く叩いた後、一言声をかけて立ち上がった。「さ、出発かも。行きましょ?」…そう言ってエンジュシティへ向かうために、方向音痴のハルカは自然公園内を西に向かって歩き出した。