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1963年、アメリカ、アルフレッド・ヒッチコック。 60年に低予算映画『サイコ』が予想外の大ヒットとなり、ヒッチコックは『サイコ』を超える作品作りに奔走することになります。 そして、自ら大の鳥嫌いであるヒッチコックがたどり着いたのが、実際に起こった鳥襲撃事件を基にしたダフネ・デュ・モーリアの短編『鳥』を映画化することでした。 映画では鳥の襲撃をなかなか信じてもらえないのですが、実は鳥は結構人間を襲います。 私も経験があります。子どものころあるトンビにつけ石を投げつけたら、しばらくそのトンビに付け狙われたことがあります。まあ、そのトンビは「札付き」で、数人の子どもを襲っており、ある子どもなどは右目の下数ミリのところに爪を突き刺されましたが(トンビは目を狙ったようです)。 また、カラスが食べ物を持った人間を背後から襲う場面を、何度か目撃したことがあります。 それと、襲われたわけではありませんが、近所にカラスの溜まり場となっている公園があり、夜中に数万羽にもなるカラスが木に止まっている中を歩いたことがあります。さすがに不気味でした。 見た目は可愛いカモメなども、結構意地汚いですし獰猛でもあります。 【ストーリー】 ペットショップで出会った弁護士ミッチに無礼な態度をとられたメラニーは、気まぐれと好奇心からミッチを追ってデボラ湾に向かうが、その途中一羽のカモメに襲撃される。その翌日、カモメだけでなく、あらゆる野生の鳥たちが人間を襲い始め、小さな町は大混乱に陥る。普段は人間に無害なスズメやカラスといった野生の鳥たちが人間たちを襲いだす・・・・。 ヒッチコックは本作のテーマについて「自然は復讐する」と語っています。映画の冒頭、ペットショップで籠に入れられたおびただしい数の鳥が映し出されますが、そのことに対する復讐でしょうか。または、環境破壊の危険を訴えていたのかもしれません。 この映画は、馴染みがある鳥たちが得体の知れないモンスターに変じて集団で人間を襲うというものですが、これでひとつ思い出したのは、欧米映画に登場するモンスター、とりわけ集団で登場するモンスターは「アジア」のメタファになっている、ということです。「アジア」とは、中国人、イスラム教徒、そして日本人などを意味します。 主人公のミッチとヘイワースは、それぞれ弁護士と新聞社社長令嬢で、容姿端麗で会話が上手く嫌味もない。つまり典型的なアメリカ中流階級に属するわけで、どこから見ても羨ましいカップルなのですが、実は共に「家族」的な病理を心のうちに抱えています(ヒッチコック映画ですから、当然ですか)。そして、その心の傷に忍び込むように、鳥が彼らを襲いだします。 かつて「日記(2004年1月24日)」で述べたように、ヨーロッパ社会の根底には「アジア」というものに対する恐怖があるようです。古くはトルコ帝国、イスラム教徒、中国(黄禍論)、日本(「エコノミック・アニマル」)と。そして、欧米人にとってこの「アジア」というもののイメージは、不規則、迷路、集団主義(個が見えない)、「何を考えているかわからない」、「死を恐れない」といったものではないでしょうか。この「アジア」のイメージは、この映画の「鳥」とそっくりなんですね。 ベトナム戦争がはじまったのが1960年。 もしヒッチコックがベトナム戦争を念頭におきながら『鳥』を製作したのだとしたら、戦争の結末を見事に先取りした内容に仕上がっているといえるでしょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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