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2002年、スペイン、ペドロ・アルモドバル監督・脚本
昏睡状態となり眠り続ける、二人の美貌の女性 バレリーナの卵と女闘牛士 話しかけ、触られた一人の女性にだけ 奇跡が訪れる・・・・ 映像に装飾品、ファッション、そして色彩を”過剰”なまでにつめ込むことによって、独特のエロティシズムを表現してきたアルモドバル監督の最新作品です。 しかし、この作品では”過剰”は若干抑えられたものになっており、そのぶん情緒性が増しています。1999年の『オール・アバウト・マイ・マザー』はアルモドバルのそれまでの集大成とされる作品ですが、それから3年、アルモドバルの作風には一つの転機が訪れたようです。 ◇ ◇ ◇ ◇ 【ストーリー】 事故で昏睡状態に陥り、病室の清潔なベッドで深い眠りについたままのダンサーのアリシア。 そんなアリシアを献身的に看護するのは、彼女を「生前」から慕っていた看護士のベニグノ。 ベニグノは、眠り続けるアリシアの髪や爪を手入れし、体を拭き、クリームをぬり、服を替える。さらに、ベニグノは彼女に日々の出来事や感動的な舞台や映画について語りかけ続け(トーク・トゥ・ハー)、はや4年が過ぎようとしていた。ベニグノは、15年もの間、家に閉じこもり母親を介護するだけの生活を送ってきたという過去があり、アリシアの看護に全く抵抗感がない。 一方、女闘牛士であるリディアが、競技中の事故によって昏睡状態に陥り、ベニグノが勤務する病院にやってきた。 ”話しかけてみて。女性の脳は神秘的だから。” 突然の事故に困惑し、彼女の傍らで泣き、悲嘆にくれていたリディアの「恋人」のマルコを、ベニグノは「彼女に話しかけて」と諭す。しかし、マルコは、眠り続ける「恋人」に話しかけるどころか、触れることさえできない。 愛する女性が同じ境遇にいるベニグノとマルコの2人は次第に心を通わせ合い、いつしか厚い友情が芽生えていた。 ある日、マルコは、リディアの前恋人から、彼女の本音を聞かされ絶望に打ちひしがれる。失意のうちに、マルコは病院を去る。 そんなある日、病院では、アリシアが妊娠していることが発覚する。そして奇跡が…。 ◇ ◇ ◇ ◇ アルモドバルは、以下のような過去10年間に起きたいくつかの事件と日々の記憶からインスピレーションをえて、本作品を企画しました、 ・美は痛みたりうる(コクトー)---人は、予感できないほどの、また、信じられないほどの美しさに遭遇すると、喜びというより、痛みに似た感情に襲われ、それが涙を生むものだ。涙は、何かを失った人の目に湧き出て、不在や欠損を補うものだ。 本作品では、マルコは頻繁に涙を流しますが(「泣く男 マルコ」)、アルモドバルはこういう意味を込めているわけです。 ・米国人女性が16年の昏睡状態から目覚めたという出来事。医学的に説明しずらい回復をとげた彼女が、看護婦に介助されながら歩く練習をする写真を見て、アルモドバルはいたく感銘を受けました。 ・ルーマニアであったのですが、死体安置所の夜警の男が、孤独にさいなまれて、また、あまりの美しさから、安置してあった女性の亡骸をレイプし、それがきっかけで彼女を息を吹き返したという事件。その女性はカタレプシーという病で仮死状態にあり、死んだように見えましたが実際には息があったわけです。 夜警は逮捕され裁判を受けますが、娘の復活に感謝した家族は、彼に弁護士を雇い弁護料を払ったそうです。 ・ニューヨークの病院で、脳死状態の女性が妊娠した事件。犯人は病院の用具員と判明しましたが、脳が死んでいても命を宿すことが出来るという神秘にアルモドバルは驚きを覚えました。 ・アルモドバルは、『悪魔の人形』(1936年、トッド・ブラウニング監督)と『縮みゆく人間』(1957年、ジャック・アーノルド監督)を観て以来、「僕は家具の足や床のレリーフ模様が主な舞台の、小さな人間の出てくる映画を撮りたいと思っていた」と語っています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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