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鎌倉橋残日録  ~井本省吾のOB記者日誌~

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2014.07.24
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カテゴリ:原発

 中西準子氏の「原発事故と放射線のリスク学」(日本評論社)を買って、読み始めたところである。

 福島の原発事故の後、帰宅できない住民は13万人にもなる。放射線のリスクはどのくらいあり、放射線の除染をどう進め、できるだけ多くの住民が帰宅できるようにするにはどうすべきか、という対策を具体的に考えた本だ。

 読了後に読後感を書くべきだと思うが、「まえがき」段階で、感銘を受けた表現があったので、その点を紹介したい。

 <(本書の特徴は)リスク評価などの結果から、除染に関する目標値(シーベルト)を提案したことです。私は「さらなる検討が望まれる」というような結論の文章が嫌いです。調べたからには、具体的な提案を出さねばおかしい、そういう態度で研究をしてきました>

 これが実践を重んじ、社会に役立つことをしようとする研究者というものだ。「さらなる検討が望まれる」などという書き方は、責任回避に汲々とする姑息な保身術以外の何者でもない。

 中西氏は自らリスクを負って、除染の具体策を提案しているのである。

 <最後の除染目標の提案に、やや大袈裟に言えば、研究生命をかけました。目標値を出すことは、危険だから減らしましょうではなく、このリスクを受け入れましょうということですから、それを言うのは清水の舞台から飛び降りるような気持ちです>

 原発反対派だけでなく、与党の政治家や行政の担当者も「リスクを速やかにゼロにして、住民を帰宅させたい(させるべきだ)」という言い方をする。大手メディアも「住民の健康、安全を第一に考えた除染対策が望まれる」などという結論でその場をとりつくろう。

 すべて逃げ、責任回避、保身である。中西氏は逃げない。研究者として真正面から責任を引き受け、今考えられる最上の対策を具体的に提示する。

 こうした姿勢に対し、よくこんな批判が聞かれる。

 <じゃ、あんた、自分で福島に住んでみたら。自分の子どもや孫と一緒に。 東京や大阪に住みながら、除染目標値を出すなんて気楽なもんだよ。無責任だ!福島の人の身になって考えろ>

 だが、中西氏は、こんなシタリ顔の批判、非難を意識してか、敢然と言い放つ。

 <(放射線のリスクを)自分を含めて受け入れますではなく、極端な言い方をすれば私は関係ないけど、避難されている方が受け入れましょうという内容です。私はこういうことを言ってもいいのか、悩み、悩み、それでも言う必要があると思ったのです>

 生活全体を考えた場合、避難生活を続けるよりも、この除染レベルで帰宅した方がいい。放射線が年1ミリシーベルト以下にするのは技術的にきわめて困難で時間もかかるし、投入する政府の予算も膨大になる。相対的に考えたら、年間5ミリシーベルト以下のレベルで除染を終え、その土地に帰宅した方がいい。

これが中西氏の提案である。地道に調査、研究を重ね、十分に考え抜いた末だからこそ、出せた提案である。その提案が生ずるであろう結果への責任を引き受けて。

 現実的な解決策というのは、理想的な解決策ではない。中西氏を御用学者と非難する声も少なくない。しかし、悩みつつも、それらの批判をすべて引き受けて最適な方策を提示している。

 真剣な姿勢を評価しつつ、読み進んで行きたい。








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Last updated  2014.07.24 17:13:00
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