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神戸辺り、たゆたう時間

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2006年04月28日
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  書名  物語 スペインの歴史
  著者  岩根 圀和
  出版社 中央公論
  ISBN  4-12-101635-1

本書は『物語 オーストラリアの歴史』とはまた違った意味で本シリーズ中の特異な存在と言えるでしょう。
本書は『物語』の要素が他のどれよりも充実している反面、歴史的な事実のトレースにはとんと興味を示していないかに思われます。
作者もそれは認識し、取り上げる歴史的事実の偏りを後書きで述べています。

例えばスペイン継承戦争に関する記述はほんの数行です。
南米などの植民地支配に関する記述も極めて表面的です。
ナポレオン戦争についてはなんの言及もありません。
それに対してセルバンテスの虜囚時代にはまるまる1章、40ページを割いています。
(セルバンテスに多くの紙片を割くことについても、後書きで言及されています)

さて、本書の構成、あるいは編纂方針はさておき、本書を読んでスペインに好感を抱く人がどれほどいるでしょうか?
本書には、スペインの魅力を伝える力に乏しいように思われます。
むしろ、スペイン史の暗部を掘り起こすのに積極的であるかのようです。

例えば、国土回復運動に伴う苛烈な異端審問はどうして人がこれ程残酷に成れるのか、という哲学的課題の格好の研究材料を提供しています。
また最終章の近代編では、ETA(バスク祖国と自由)の暴虐振りが詳しく述べられています。
これだけを読むと、「スペインというのは危険な国で、残虐な国民性を持つんだ」と誤解する人が出てこないとも限りません。

唯一栄光の歴史物語と言えるのは、レパント海戦の下りだけです。
無敵艦隊の物語も、その名はまるで皮肉であるかと思われるほどに惨敗の記録です。
そういえば、サッカーのスペイン代表チームのニックネームも『無敵艦隊』ですが、国際大会でさしたる成績を収められないというのは何か因縁なのでしょうか?

またETAのテロ活動のくだりでは、なぜにそれほどの暴力にバスクの人達がそれほどの暴力に訴えるかについて、なんの言及もありません。
更には現在の代表チーム不振の原因と指摘される、地域間の敵対意識の源流とも言うべきフランコ時代の地域差別についても触れられていません。

本書は確かに物語としてはおもしろいです。登場人物の性格の細かい描写や、細部のエピソードは歴史書のそれではありません。ただ私がこのシリーズに求めるのは、「物語を通じた歴史」です。そういう意味では、必ずしもお進めできる一冊とは言えません。

<総合評価>
お薦め度  ★★☆☆☆
<個別項目評価>
図表充実度 ★★☆☆☆  海戦の図などは充実
             だが歴史理解のための図は不足
物語の出来 ★★★★☆  物語のおもしろさはシリーズ中突出している
年表の出来 ★★☆☆☆  ただの事実の羅列
             そもそも年表で書かれている歴史的
             事実のほとんどは本編では
             触れられていない





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最終更新日  2006年04月28日 18時50分58秒


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