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書名 物語 中東の歴史
著者 牟田口 義郎 出版社 中央公論 ISBN 4-12-101594-0 さすがに元新聞記者、『読者に読ませる文』を書く能力は洗練されています。 各章に物語られている物語は読み応えがありながら、歴史の重要な流れをつぶさに捉えています。そしてその過程で、重要な周辺国、すなわちギリシャ、ローマ、モンゴル、イラン、神聖ローマ、ヴェネチア、スペイン、フランス、イギリス、ビザンツ帝国などのかかわりが相手側の事情まで踏まえて分かりやすく説明されているのもよい点です。 直前に読んだ『物語 スペインの歴史』より、ある時代についてはスペインの事情が分かりやすくかかれているなど、物語性と歴史解説の両面のバランスがとれていると言えます。そういう意味では良書でしょう。 さて本書が対象としている中東ですが、第2章までとそれ以降、言い換えればイスラム以前と以後では全く趣が異なります。 端的に言うと「女性が主人公足り得るか、いなか」ということです。アラブでは(もちろん現在も)女性の社会進出が相当制限されていると聞き及びます。 本書に語られている中性でもその事情はきっと同じだったのでしょう本書の第3章以降の登場人物は、ほとんどがむくつけき男達ばかり。色気のかけらもありません。 やはり男性である私にとっては、女性という存在が社会に与える影響というものに注目したいし、あわよくばそこに大人のちょっとした華やかさをを感じたいものです。 その辺りが日本人が中東地域になじめない理由、と思わないでもありません。 それはさておき、本書を読んでも思うのが、中世イスラム社会の柔軟性と宗教的寛容性でしょう。中世ヨーロッパの宗教的非寛容との対比がそれをより顕著に描き出します。 イスラムには自分たちの宗教の本質的優位性に絶大な自信があり、強制せずともやがて被支配民がイスラムに改宗して行くだろうというもくろみがあった、と想像してしまいます。 さて、真相やいかに? <総合評価> お薦め度 ★★★★☆ 中東史の入門として、お進め <個別項目評価> 図表充実度 ★★★☆☆ 比較的充実している 物語の出来 ★★★★☆ 読ませる能力は職歴のなせる技 年表の出来 ☆☆☆☆☆ 年表が存在しない。ちょっとこれは??? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年05月16日 08時23分37秒
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