CCFとAPV
CCFとAPVなんて書くと、なんかパソコンのソフトみたいだなあと見せておいて、実はファイナンスの話。ヲタクと思われそうで怖いんですが、ちょっと感動したので書きとめておきます。 CCFは、Capital Cash Flow、APVは、Adjusted Present Valueの略。両方とも会社の価値を算出するときの計算方法です。恥ずかしながら、G社にいたときは、会社の価値を計算するやり方って、Unlevered Free Cash Flow(有利子負債がないと仮定して算出したフリー・キャッシュフロー)をWACC(加重平均資本コスト)で現在価値に割り戻す、という方法しか知りませんでした。おなじみの、Unlevered Free Cash Flow = EBIT x (1 - 税率) + 減価償却費 - 設備投資 - 運転資本の変動、WACC = D/(D+E) x (1 - 税率) x Cost of Debt + E/(D+E) x Cost of Equity、ってやつですよね。(Equity Cash FlowをCost of Equityで割り戻す、というのもありましたが、僕のカバーしていた業界では使いませんでした) でも、このやり方を、お客さんの腑に落ちるように説明するのって、なにげに至難の業じゃないですか?そもそも、いったん、有利子負債がないと仮定してフリー・キャッシュフローを出して、それを税効果を反映したWACCで割り引くことで、数学上Interest tax shield(負債があって金利を払うことで、金利がない場合に比べて、税金が浮く)の現在価値も計算に織り込まれる、なんて、感覚的にはピンときませんよね。(数式を書けば腑に落ちますが)WACCを計算する時だって、この会社の時価ベースのD/(D+E)が未来永劫X%で推移するなんて、知るかっつーの、って思ったりしませんでした?最近はLBOの案件なんかが多くて、将来の有利子負債の金額予想もきっちり決まっている案件があるのに、「D/(D+E)=X%」と設定して解くのはなんか変だなあ。。。とか。 で、これらの悩みを、解決してくれるのが、APV法とCCF法なわけです。APV(Adjusted present value)は、有利子負債がない場合の企業価値をまず計算(Unlevered FCFをRaで割り戻す)して、そのあとにInterest tax shieldの現在価値を計算(interest tax shieldをRdで割り戻す)して、両者をたして、資本構成を反映した会社の価値を出す、というやり方。これなら、有利子負債の金額予想を正確に反映したバリュエーションができます。これは、去年のファイナンス2の授業で出てきて、「ぬおーーー!」と叫びそうになったのを覚えています。 APVに加えて、今回のInternational Financial Managementで登場した新技が、CCF法(Capital Cash Flow法)。やり方は超単純。ステップ1: Capital Cash Flowを算出。計算方法は、EBIT - Tax (EBT x Tax Rateとして計算) + 減価償却費 - 設備投資 - 運転資本の変動。この数式なら、Interest tax shield(金利を払うことで、金利がないときよりも税金が浮いた分)も織り込まれていますよね。ステップ2: Capital Cash FlowをRaで割り戻す以上。すごい簡単ですっきりしているだけに、なんで今まで現場で使われていなかったんだろう、と思います。もしかすると、僕が在籍しているときに使っていなかっただけで、今はG社のバリュエーション・ブックなどにも載っているのかな?CCFを使ってCross boarderのLBO案件のバリュエーションをするレポートは、作成に6時間くらい費やしましたが(必要な前提がケースにちゃんとかいてなくて、推測にやたら時間がかかった)、目からウロコの新たなやり方を学べたのでよしとします。