福井Trip
Japan Trip終了後、HBSの仲のいい友達4名を連れて、地元の福井を案内した。面子は、セクションメートのアルン(インド系アメリカ人)、フラン(アメリカ白人女子、わがままっ子)、ジョゼ(日系ブラジル人)、スタディーグループのメリッサ(中国系アメリカ人)。150人の外人集団から解放されて、少人数で旅行できるのはとても気楽だ。多分、僕は旅行の幹事が嫌いとか、外人の世話が嫌い、とかいう以前に、単に大勢での団体行動がへどが出るほど嫌いなんだと思う。広島を朝8時の新幹線で出発し、福井に到着したのがお昼前。さっそく駅前の「福そば」に向かう。結構昔からある越前おろしそばの老舗。「そばは音をズーズーたてて食うんだぜ」と教えると、みんな喜んで音を立てて食う。わがままっ子フランは、早速「卵とネギと醤油が食べられない」というので、ネギも醤油も入っていないネギとろ丼セットを頼んでやった。ネギとろの醤油は食べられないくせに、そばつゆや刺身の醤油を平然と食べていたことについては、あえて突っ込まず、捨ておいた。昼過ぎに、ツアーガイドを買って出てくれた僕の姉と、その友人が迎えに来る。丸岡城と東尋坊を案内。丸岡城は日本に現存する最古の天守閣で、中に飾ってある鎧や刀などを見て、みんな「Samurai, samurai」とはしゃぎまくり、大興奮だった。ところが、幕末に金の小判に代わって発行された藩札を見たとたん、「これが日本におけるインフレーションのはじまりであるか」という話になり、姉と友人はドン引きしていた。東尋坊は、珍しく海がとても凪いでいて、きれいだった。イカの丸焼きとサザエのつぼ焼きにみんな大喜び。フランが調子に乗って「黒ゴマソフトクリーム」を食べそうになるが、「もうすぐ夕食だから」といってやめさせる。その後、宿泊先の芦原温泉へ。僕の高校時代の友人の父上が営業部長をやっている旅館で、きれいな日本庭園が見える広めの和室を格安にして頂いた。風呂はみんな問題なく入る。アルンは、「スパ」と名のつくものに入るのがはじめてらしく、温泉の癒し効果にいたく感動していた。食事は、福井の海の幸をふんだんにちりばめた超豪華な料理。特に刺身は絶品。僕自身も久しぶりにこんなにうまい魚を食ったし、メリッサにいたっては「人生で一番おいしかった食事のひとつ」と絶賛。フランも相変わらずいい動きをしていて、みんながマグロとウニがうまいというので、「おいしいものは最後に食べるのよ」と楽しみに待ったあげく、刺身が生ぬるくなっていてショックを受けていた。ちょっとだけいい気味だと思った(毒)* * *翌日は、朝一番で、僕の親戚の常山酒造へ。今は夏場なので仕込みの様子を見せられなかったのは残念ではあるが、蔵元と杜氏が自ら案内してくださった。工場に入るやいなや、みんなオペレーションの授業の成果を試したかったのか、「増産するためには、製造プロセス上、何がボトルネックになるのか」だとか、「近代的な機械の導入に伴って、古来の技術が失われるなど、マイナス点はないか」などのまじめな質問や、「冬場しか醸造しないというが、夏場でも工場内にクーラーを入れまくって冬みたいな気温にすれば通年生産が可能なのではないか」などの外人ならではの質問が飛びかっていた。杜氏は、予想外の熱い質問攻めに刺激を受けたらしく、かなり熱弁をふるって説明してくださった。工場見学のあとは、酒のテイスティング。純米の生絞り超辛と、このほどの全国新酒品評会で金賞を取った大吟醸の二種類を頂く。ブラジル人ジョゼが「口当たりはさわやかで上品だが、のどを通ったあとはフルボディーな芯のある味わいだ」などと一丁前なコメントをし、蔵元がバカ受けしておられた。テイスティングが一通り終わると、マーケティングのディスカッション。つまり、どうやって売上を増やしてブランドの認知度を上げていくか、という内容。Push marketing派と、Pull marketingはに別れ、熱い議論が展開された。蔵元も杜氏も僕も、小さな蔵だから、営業をがんばってどれだけ小売の棚に置いてもらえるかが勝負でしょ、というPushのマインドセットだったのだが、外人のアグレッシブなPull marketing戦略(広告などで消費者の需要を喚起して商品を売っていく手法)は、なかなか新鮮な考え方ではあった。結局1時間の見学予定が、4時間近くお邪魔してしまった。見学で見たものをすぐケースみたいにディスカッションしてしまうあたり、やはりHBS生はNerdだとつくづく思ったのでした。この勢いだと、酒の米国輸出プロジェクトは、本当にフィールドスタディーの研究テーマになっちゃうかもしれない。その後、僕の実家に案内。築後150年くらいの古い家で、伝統風な座敷もあり、みんな大喜び。畑や田んぼも案内してやった。近くの神社に立ち寄ったところ、神主さんが大喜びで、普段人を入れない神殿の内部まで案内してもらえた。夜は僕の家族と会食。今年93歳になるじいちゃんも出てきて、ちょっとした騒ぎだった。じいちゃんは英語はまったくわからんくせに、僕のクラスメートたちは「賢さを謙虚さで隠せるくらい賢い連中である」と意味があるような、ないような評をたれていた。そんなこんなで、福井tripは正統派な田舎ツアーでかなり楽しんでもらえたと思う。少なくとも、日本は、東京や大阪などの大都会だけじゃないんじゃ!という僕のメッセージはクラスメートたちに明確に伝わったことと思う。また、冬にでも「蟹&スキーツアー」と題して企画しようかな。