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本との関係記

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2004/11/08
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カテゴリ:国内小説感想
 自選よりも他選のものを読みたい。この短編集を読んで作者が「右」寄りの人とはうっすらとして気配くらいしか感じない。年譜を見てやや驚く。こうした形でよく、現代作家達に関しての自分の無知に出会う。どこかで触れられていたように、小説家の中ではそっち寄りは少数派だ。どちらであろうとその点にあまり興味はない。


「日本は今苦しい。お前たちは、千五百メートルの競泳の時のことを考えてみろ。最後の何分間かが実に苦しい。苦しい時は、勝利の瞬間が近付いている時だ。その時頑張らなくてどうするか。日本は今、最後の勝機をつかんで追いこみにかかっているのだぞ、分ったか」
「分りました」
 顔にいっぱい汗を浮べた年少の兵士たちが真剣な面持ちで答える。
 自分がアジテーターであったと、そう思うことは、醒めてみると羞しいことであった。敗戦後の世界で、再びアジテーションの匂いのするものに対して、彼は極度に警戒的になった。自分自身がもう一度何かのアジテーターになることは、もとより一層願わしくなかった。
「華かなるべき青春を戦争に奪われ、学窓から直ちに戦線へかりたてられた純真であわれな青年たち」と呼びかけられると、彼は、
「ああそうですか」というより仕方ない。
「先生、先生たち戦中派の人たちが、今こそもっと発言すべき時ですよ」と言われると、黙って横を向く。学生たちの一部から、彼はぬるま湯につかったような反動教授だと言われている。

『青葉の翳り』より


「ああそうですか」が好き。戦中戦後の思い出を抱えて同窓生のその後と対面する『青葉の翳り』は読み応えがあって自選短編集の表題になるくらいだから勿論いい作品なんだけど、『鱸とおこぜ』『スパニエル幻想』みたいな馬鹿馬鹿しくて可笑しい作品も楽しめた。
 でも、十分楽しめたからこそ、この一冊だけでもういいやという気もするのだ、面倒だから。
 

講談社文芸文庫 1999年





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Last updated  2004/11/09 01:02:12 AM
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