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カテゴリ:国内小説感想
ミステリーでは必ず人が死ぬ。物語の展開のために人が死ぬ。作者が思いついたトリックの犠牲となって人が死ぬ。一人の人間を殺すのに、目的を隠蔽するためだけに大量虐殺を用意したりもする。
人の死を読むのは苦手だ。と思っていたけれど、大勢人が死ぬのは何もミステリーに限らない。どうやら「ミステリー小説的死」が苦手らしい。小説よりもっと直接的な、漫画やドラマのミステリーは見ないようにしている。映画となると割り切れてしまうのだけれど。 とここまで書いて、「本書も一応ミステリーだけれど、どの死もトリックもふざけているから、深刻にならずにすんだ」とでも続けようとしていたのに、「講談社ノベルス二十周年に捧げる極上の新青春エンタ」という紹介文に気付いてしまった。これをミステリーと言ったら怒られるよなやっぱり。 混乱のうちのファーストキスと常軌を逸した女と名探偵ルンババと死体冒涜と姉の死の謎と青春の甘酸っぱさとを、全て密室で味付けした物語。笑いながら、時折気分悪くなりながら読んでいたら、最後に爽やかに泣きそうになってしまった。油断していられない。 『煙か土か食い物』との繋がりは、名探偵ルンババだけじゃない。読み終えた直後は気が付かず、風呂に入っている時「あ!」と驚いた。途端に『煙か土か食い物』の登場人物の誰彼が思い浮かんできて本書とのあの事件との関わりがあるとすればそれは誰だったか、と考えているうちに何だか楽しくなり、『煙か土か食い物』の株が少し上がる。 講談社ノベルス 2002年 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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