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カテゴリ:国内小説感想
くるまたにちょうきつと読む。素直にくるまやちょうきちと読んでいた。
短いもので2ページ、長くても十数ページの、超短篇を集めた一冊。いまだ車谷長吉のことをよく知らないので、この人はひょっとしたらこういうものばかり書いている人なのかもしれない。『赤目四十八瀧心中未遂』あたりから挑めばいいものを、知らない人の長篇には今一つスーっと入っていけないまま。 杉浦日向子の漫画「百物語」に似ている。ものもある。 白骨の男 四十五歳の正月、何の当てもなしに、巣鴨駅から電車に乗った。午後四時を過ぎて、私が降りたところは、中央本線の相模湖という駅だった。人通りのない坂道を下りて行くと、夕日の沈んだ直後の湖が見えた。三、四軒、茶店があった。併しそこにも、誰もいなかった。奥から白いエプロンを掛けた狐が出て来て、寄って行きませんか、と親切に言うてくれたので、なかに入って、蒼く透いた夕暮れの湖を眺めながら、狐が出してくれたおでんで、お酒を呑みはじめた。壁に大きな一枚鏡がはってあって、その鏡の中でも、白骨の男が笑いながら、おでんでお酒を呑んでいた。男は、あなたのために歌を歌ってあげよう、と言って、私が小学生のころにならった歌を歌ってくれた。 これで一編終わり。原稿用紙一枚分にも満たない。 こういうタイプの話が好きだからこそ、これではあまりにも物足りなさ過ぎると感じる。他の話にしても、はっきりと「好き」ともいえない。「百物語」が優れすぎているから、あっちには絵もあるから、ということかもしれない。内田百間や川上弘美の短篇とも違う。特に書くこともない。この作者についてはしばらく様子見。 角川書店 2004年 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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