基本に忠実に本質を伝える

2005年2月21日の日本経済新聞朝刊に「統計のウソ」というスクープがありました。

　サーチャー（情報検索技術者）ならば当然知っているべきことですが、サーチャーでなくても、賢く情報を使いこなすためには知っておく必要があるでしょう。

　統計には概ね以下のような留意点があります。
☆統計の対象となる母集団は何か
☆そこから抽出してきた調査対象は母集団の属性を反映しているか
☆抽出した調査対象の大きさは母集団の属性を統計的に反映できる大きさか
☆統計の調査項目は適切か

　これらを満たしていない統計は信用性がないので、信用してはいけません。
きちんとした統計を取るのにはお金も技術も必要ですし、統計をとる側に一定の先入観があると、結果もそれに左右されます。
　さらに、アンケートの場合には、アンケートの設計がある意図を含んでいるかどうかも結果の判断には重要です。

　一例として、ＣＯ2削減問題についてアンケートをとったとしましょう。著作権者はフェラーリ君です。


アンケート１
　地球温暖化を防止するためにＣＯ2発生源の一つである自動車の規制をすべきかどうかが議論されています。

　Ａ，過疎化が進み、公共の交通機関が次々に廃止されている地域が広がっています。あなたは公共の交通機関だけで生活ができますか？
　　　（　はい　・　いいえ　）

　Ｂ、最近は大型の駐車場をそなえたショッピングモールが増えてきました。高齢者も増えており、大きな荷物を運ぶのは大変です。
　あなたは、車を一切使わずに買い物ができますか？
　　　（　はい　・　いいえ　）

　Ｃ、救急車の到着時刻が様々な事情で遅延する傾向にあります。
　あなたは一度でも急病人を自家用車で運んだことがありますか。または運ばれたことがありますか？
　　　（　はい　・　いいえ　）

　Ｄ、自動車会社の技術開発が進み、排気ガスが少なく、燃費も良い自動車が既に販売されています。また、行政もＣＯ2排出量が少ない自動車の購入を支援する方向です。もし、適切な価格であれば、これらの車を購入・使用する可能性がありますか？
　　　（　はい　・　いいえ　）

　Ｅ、上記の問題を踏まえた上で、あなたは自動車の利用を制限すべきでないと思いますか？
　　　（　はい　・　いいえ　）


アンケート２
　地球温暖化を防止するためにＣＯ2発生源の一つである自動車の規制をすべきかどうかが議論されています。

　Ａ、地球温暖化が進むと海面が上昇し、住宅地区が水没すると言われています。あなたは、山間部を切り開いて生活することができますか？
　　　（　はい　・　いいえ　）

　Ｂ、温暖化で気温が上昇すると一年中夏になる可能性があると言われています。
　あなたは40℃を越える猛暑に耐えられますか？
　　　（　はい　・　いいえ　）

　Ｃ、気温が上昇すると害虫や病気が増えると言われています。
　あなたは未知の害虫や病気と闘えますか？
　　　（　はい　・　いいえ　）

　Ｄ、上記の問題を踏まえた上で、あなたは自動車の規制をすべきだと思いますか？
　　　（　はい　・　いいえ　）


　最後の設問はほとんど変わらないけれど、途中の設問が変わると最終的な答えに影響しませんか？
　ここまではっきりと意図を出してくるアンケートは少ないかもしれませんが、アンケート結果も鵜呑みにしない、というのは、情報リテラシーの一つです。

　フェラーリ君は自動車規制反対派なんですが、自動車規制派の答えを導くような設問も敢えて作ってもらいました。難しいかな？と思いましたが、予想以上に頑張りました。

　私は、うーん、頑張れないかも。
かしこ