|
カテゴリ:読書
『回転木馬』 柴田よしき・著 <133>
謎の失踪をとげた夫・貴之の探偵事務所を引き継いだ下澤唯。 偶然目撃した夫を探し求めて細い細い糸をたぐってゆく。 貴之は雪という女性との間に「ゆい」という子をもうけ、 違う人生を歩んでいるらしい。 唯はどうにもできない想いを抱えて・・・・。 その時、敬吾の心に湧き上がったものは、説明のできない悲しみだった。 自分とこの女とは、今、迷子なのだ。 人生の迷路の中で、ふたりして迷っている。 この迷路の外には、別々の人生が待っている。 だがこの迷路を二人は、あと15年、出ることはできない。 誰かの人生と別の人災とを比較して、 どちらがより幸福、どちらがより不幸、などと考えるのは、 無駄なことだ。 人生は、結局、それぞれひとつずつしかなく、 他人のものを自分が体験することはできない。 より幸福だと言われてもそれを自身で証明することはできないのだし、 より不幸だと言われても、だからどうしたらいいのか、 それは誰にも答えられない。 「そういうのって、運ですよね。 たまたま恋に落ちることだできればきっと、 何もかも目の前の光景が違って見えるんだろうけど。 落ちるときはあっさり落ちるのに、 落ちたいと切望していると相手が現れない。 恋って、意地が悪いわ」 自分と貴之とは、並んだ木馬に座っていた。 そのまま何ごともなkれば、 回転が停まるその時まで、木馬はふたつ、並んだまま、 そしてふたりも、並んだままでいられただろう。 だが途中で、貴之は、別の木馬い跨がった。 回転は続く。終わりのない日が来るまで続く。 誰が悪いわけでもなく、狂ってしまった人生がいくつも。 唯の切ない気持ちが、伝わってきます。 とても考えさせられる一冊でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[読書] カテゴリの最新記事
|