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6月7日の朝にいきます

6月7日の朝にいきます

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2005年08月16日
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キミを失いたくない。
私を嫌いになったのならともかく、「売れっ子にするため」というスタッフの思惑から引き離されるのだけは耐えられない。

ルックスが売り物のアイドルだって、みんな恋くらいしている。
歌を創る響司なら、なおのこと、恋する感情が曲創りに悪い影響を及ぼすなんて思えないもの。

もちろん、スタッフの計算も解らないではない。
まだ高校生のKYOJI。ファンの多くはおそらく最初のうちは同年代か年下。
だとしたら、恋人の影はない方がいい。
まだ10代の夢見る年頃の子は、自分がKYOJIの彼女になる夢を見る。

…それでも、実生活を上手にベールで覆うのは、スタッフの役目だよね。

今度のことで、キミはわりと解りやすい人なんだって思えた。
目の前にある大きな事柄にとりあえずは全力で集中していくタイプ方だから、
どんなに好きな相手でも逢わずにいたら諦められるんだね。
私みたいに恋愛体質ではないみたい。

だから、キミの心が離れないようにするためには、もう遠慮はしない。
いつだって「逢いたい」と、メールで、電話で、伝えよう。
わずかな時間でも、顔を見るだけでもいい。キミとの絆をつなげていこう。

ずっとずっとキミの大事な人でいたい。そのために努力もしよう。
キミの恋人として、いつか回りの人たちに認められる日がくることを信じよう。
迷ってなんていられない。だって、好きなんだもの。キミを離したくないんだもの。

楢咲ユミ用の詩を新たに3本書き上げた。
銀河系の星の名を散りばめ、宇宙から人類へ絶えず送られている大きな愛を、好きな人への愛へとリンクさせた。

メールに添付して、チーフマネージャーの磯貝氏に送る。
ユミの恋人だという磯貝氏は、一見穏やかに見えるが、
かなりのやり手だということは、彼を取り巻く人々の彼に対する言葉遣いや態度から察しがついた。

モデルだったユミは磯貝氏によって新しい命を吹き込まれた。そこには大きな信頼関係があるだろう。
磯貝氏に気に入られたらユミとの仕事もうまく運ぶだろうから、丁重なあいさつ文を添えた。

結果はすぐに電話で知らされた。自分でもいちばん気に入っている詩がユミに選ばれた。
今後は作曲する人に渡され、曲が出来上がった段階で再度ハメ直す作業が待っている。
ユミくらいのクラスならば、何人かの作曲家に依頼し、いちばんいい作品が選ばれるのだろう。

響司には内緒。これは仕方がないことだけれど、本当は隠し事はしたくないけれど。
キミがもう少しこの世界の仕組みを理解できるようになったら、きっとこっそり打ち明けるからね。

キミの誕生日・18歳になる日が近づいている。
「お祝い、何が欲しい?」そう聞きたいけれど、
デビュー祝いの時のように「瑠璃がほしい」って言ってくれなかったら悲しいから、黙って用意した。

セーターなど目につくものは、親御さんにいぶかしがられるだろうから贈れない。
だから行きつけのフレグランスの店で、キミが好みそうな香りを調合してもらった。
コロンではなくオイルにして、肌に直接つけられるもの。

「瑠璃って、いつもいい匂い。なんていう香水?」そう以前に聞いてくれたよね。
私のは5種類の薔薇のエッセンスに乳香をプラスしたものなんだよ。
響司にはライムやマンダリンオレンジといったさわやかな柑橘系の香りに、
ユーカリをプラスした。
キミだけの香り。カルテを作ってもらったから、いつでも追加注文はできる。

「ねぇ、誕生日には逢える?」そうメールを送ろうと考えていたとき、キミからのメールが届いた。
「今、電話していい? すごいことがあったんだ」
「OK」と返してキミの電話を待つ。
すごいことって、何?

「今ね、石井さんから電話があったんだ。
でね、楢咲ユミがオレに新曲を書いてほしいって言ってきたんだって。なんか夢みたいだよ」
キミは相当興奮しているんだね。声がいつもより1オクターブ高いよ。

「石井さんがね、受験勉強で大変だろうけど、受けてみないか、って。
何人かに頼むから、必ず使ってもらえるわけじゃないけど、
これを断るのはもったいないって。ねぇ、どう思う?」

それは…響司には知らされないけれど、私の詩に響司の曲が乗るっていうことだよね。
本当なら私の詩だと知った上でふたりの合作を産んでほしいけれど。
複雑な気持ち。
ただ、確かにこの話を断るのは新人の彼にはもったいない。

「時間が許すなら、やってみたら? 響司の曲でヒットしたら、すごいことだもんね」
そう言ってしまった。
このことが、いずれとんでもない結果を招くとは、思いもよらなかったから…。





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最終更新日  2005年08月16日 16時48分54秒



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