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2021.03.27
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カテゴリ:映画館で見た映画


映画を見終わったとき、プロデューサーとしてフランシス・マクドーマンドが単独でクレジットされた時、彼女の本気度を知った。
オープニングでの荒野で一人の彼女を見たときにも、すごいなと小さく思った。
中盤、湖水のような澄んだ水に浮かぶ彼女を見たときもすごいなと思った。
ところどころ人とのかかわり、仕事における社会とのかかわりがあるため大人数になることもあるが、半分以上が彼女一人。でも、孤独ではない。ホームレスでなく、ハウスレス。
学もあり代用教員まで勤めた彼女が何ゆえに短期間労働者となって、荒野をさまようのか。
”ノマドランド”車を住みかとする路上生活者。
”ノマド”には高齢者が多い。人生を陸上競技のトラック一周に例えると第4コーナーにさしかかった者か、最後の直線を走っている者だと思われる。それゆえ、スタートしたばかりの十代や第1コーナーの二十代や第2コーナーの三十代には彼らの心境はわからないのではと思える。とはいえ、歳をとればわかるわけではなく、お金に価値を見出し、成功者となった者や成功を夢見る者にはわかりえないだろうし、都会の暮らし、裕福な暮らしをしているものにもわからない。そんなことも映画では描かれる。

面白い映画ではなかった、楽しめる映画でもなかった。心情は理解できる。しかし、わかりえたのか。歳をとって第3コーナーか第4コーナーを走っている私は夢破れても都会の生活を捨てられず、成功への欲望は残っている。だから気持ちは伝わっても、心底わかりえたのか、わからない。いい作品だと思う。大きな感動はないが、この感触は何だろう…。

2020年/アメリカ/108分/G
​​監督:クロエ・ジャオ
原作:ジェシカ・ブルーダー
脚本:クロエ・ジャオ
出演:フランシス・マクドーマンド、デビッド・ストラザーン、リダ・メイ、スワンキー、ボブ・ウェルズ

​​​原題:Nomadland(「遊牧民の国」)​​​
 
お薦め度
「​ノマドランド​」★★★☆(70%)​​
 字幕翻訳:牧野琴子

<ネタバレ>
「ファーゴ」でフランシス・マクドーマンドを見たとき、これほど息が長く、第一線で主演で女優を続ける人だとは思わなかった。久々に注目したのは「スリー・ビルボード」。どちらもアカデミー主演女優賞を受賞している。そして、今回「ノマドランド」。受賞するかどうかわからないが、彼女らしい作品と思えるし、プロデューサーとなっていることは驚愕だった。
物語はガレージから始まる。何やらバン(車)に荷物を積んでいる。そして、荒野にひとり、放尿している。驚いた。
車で寝泊まりする宿泊所があることに驚いたが、日本でも今では車で泊まれるところもできたように思う。
さて、アマゾンの配送センターで働いていたが、クリスマス休暇とともに終了。アマゾン負担の宿泊代を打ち切られ、旅に出る。
”ノマド”と呼ばれる車上生活者には高齢者が多い。息子を亡くし人に尽くすために来た人がいるし、ファーンのように砂漠という辺鄙なところにあった企業城下町が企業の撤退ともに退去を余儀なくされて一人暮らす者もいる。
一人旅、澄みきった湖水のような池のような中に全裸で浮かぶ彼女、女優としてのマクドーマンドの度胸に驚く。

独り者なので天涯孤独かと思いきや窮地に陥ったときに身内がいることがわかる。姉がいた。普通というよりは裕福な暮らしをしている姉夫婦がいた。子はなく夫が亡くなり独り身となったファーンは夫のために辺鄙な町で暮らし、夫の死後も居座ったという。そして、町がなくなるので致し方なく、町を出て”ノマド”となった。夫とともに夫への思い夫の思い出を胸に宿し生きていると思えるファーンにとって、愛されて求められて家のある暮らしをすすめられても安眠できない。彼女は彼女の想いとともに生きている。
修理するより買い替えたほうが良いと言われても自らの手で改良を重ねた車を手放すことはできない。そんなファーンである。
死ぬまで一人。
車に一人。
そして生きていく彼女。死ぬまで生きていく。

大きな感動はないけれど、インパクトと何かしら感じるものがある。じわりと感じるものがある。









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最終更新日  2021.03.27 22:33:40
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