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カテゴリ:エッセイ「人間50年その後…」
エッセイ「人間50年、その後…」⑮ 《離婚届》 遠い遠い昔のこと……。 今から50年くらい前のことだろうか、年端もいかない頃をすぎてか、おばさん三人に取り囲まれて書いた覚えがある。 場所は繁華街、駅前の長いアーケード商店街の中ごろにあった飲食店で丼(どんぶり)を食べた時、何かわからなかったが、「ここに大人の字でおっちゃんの名前を書いて」と言われ、三人のおばさんが見守る中、力を込めて書いた。(と思う) 「やっぱり男の子は違うな、しっかりした字を書くわ」 なんて言われて、ざわざわした気持ちのまま丼をかきこんだ(と思う)。 おばさん三人はうちの母とはす向かいの家のおばちゃんと4軒ほど先のおばちゃんであった。近所の仲良し3人組だ。 おっちゃんの名前は4件ほど先のおばちゃんの旦那さん。 旦那さんは中肉中背よりやや大きくかたい肉でおおわれている丸っとした顔は赤黒く、めったに見ない背中には大きな紋々(もんもん)があった。(紋々=入墨) しばらくして、4軒ほど先のおばちゃんはいなくなった。 その家にはおばあさんと旦那さんと年子の兄弟二人がいた。 兄弟たちとは特に仲が良かったわけではないけれど、母親同士が仲が良かったため、遊んだ記憶がある。ただ、おばちゃんがいなくなって4軒ほど先の家にはいかなくなった。自然と疎遠になったと思う。 近所なのに彼らの存在を忘れていたけれど、中学生の時に、2度交渉があった。 私が中学2年の時、4軒先の家の兄のほうが中学1年だった。 中学の帰り道、その兄と何があったか覚えていないけれど、上級生・中学3年のヤンキー女子に絡まれた。かわいらしくてイケテル上級生で顔だけ見知っていて、密かに好意を持っていたのに、ガンをつけられて「こいつ(兄)に、かまうんじゃねえぞ。ただじゃおかねえからな」なんて脅された。 もう一度は中学三年生の時、弟の方だ。こちらは原因がわかる。名前を呼び捨てにしていたからだ。弟は舎弟のような同級生二人を引き連れて徘徊していた。弟を見かけると昔のよしみで呼び捨てで名前を呼んでいた。弟は格好がつかなかったんだろう。先輩にあたる三年生の悪ガキどもに頼み、その悪ガキどもが私をシメに来た。なぜか場所は小学校の裏庭、5~6人に囲まれて、威勢のいい悪ガキ一人とタイマンすることになった。やむなく虚勢をはっただけの私は勝てるわけもなく、最後には土下座をし、その土下座した頭を踏みつけられた。それで許してもらえることもなく、同級生の一人を呼び出し連れてくる使い走りをさせられた。同級生の一人は子供の時のそろばん塾の仲間だった。呼び出しに応じた彼がそのあとどうなったかは覚えていない。 弟の名前は呼び捨てにしないという約束をさせられた。 時を経て、婚姻届けを書くときに、記憶の底にしまい込まれたおばちゃんたちと名前を書いたことを思い出した。あれが離婚届だったという確証はないが、3人が見守る中で書き、褒美なのか丼をほおばった記憶が浮上した。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2023.06.08 07:00:09
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