4321864 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

再出発日記

PR

フリーページ

カテゴリ

お気に入りブログ

「枕草子(まくらのそ… New! Photo USMさん

『村上春樹と私』6 New! Mドングリさん

日本出発前日 New! はんらさん

良く食べたなあ New! マックス爺さん

埼玉の小学生殺人事… New! 七詩さん

カレンダー

全434件 (434件中 1-10件目)

1 2 3 4 5 6 ... 44 >

読書フィクション(12~)

2019年09月20日
XML
テーマ:本日の1冊(3011)

「モンスーン」ピョン・ヘヨン 姜信子訳 白水社

「ユジンさんには幼稚な質問を沢山しました。なぜ台風の進路の正確な予測は不可能なのか、風向きはいつ変わるのか、といったことです。気温差や自転が風を起こすのだということは常識的にわかっています。しかし、モンスーンのようなものの場合ですよ、あのように規模の大きな風は、いつ風向きを変えるのか、その瞬間をあらかじめ知ることはできないのか、といったことを理解するのが難しかったのです。それについてはご存知ですか?」(23p)

妻の上司であり科学館館長であるこの男は、もしかしたら赤ん坊が偶然の事故で亡くなった日に妻と会っていたかもしれない。カウンターで何も無かったように話しかけるこの男に、夫のテオは怒りの衝動を起こしかける。もっとも、それだけの話である。この短編「モンスーン」が韓国の文学賞を獲ったのは、妻の不倫も明らかにせぬまま物語を終える構造が、セマウル号事件が起きたばかりの韓国の人々の琴線にふれたからかもしれない。しかしそれだけではない。

私は仕事の関係で、雨雲レーダーをよくチェックする。直後の1時間の間に雨が降るかどうかを確認するのに、これは95%ぐらいは信頼がおけると思っている。同僚は黒雲が低く立ち込める空模様を見て「雨が降りそう」と不安がっているが、私は降らないことを知っている、バカだなぁと優越感にふける。人は、雨が降り始めるまで予想も出来ない人、経験値で予測できる人、私のように神の視点(ツール)で予測出来る人にわかれているのではないかと思ったりする。しかし、3時間後には雨雲レーダーはゴッソリその前の予想を変える。現代の科学は、2時間過ぎれば風の向きを予測出来ない。でも、確率的には、天候は人類が未来を予測できる分野としては最も進んだ分野だろう。

偶然の事故を人は予測できない。

けれども人は、その原因を探って、人を責めたり自分を責めたりする。その心の動きを作者は恐ろしいといっているようだ。

私は、それを認めながらまた別の感想も持った。

韓国社会は、まるで日本のパラレルワールドみたいだ。小説で読むと特に感じる。いろんなところが我々と同じようで、少しづつ何処か違う。団体観光は遺跡や産業団地になんかは行かない。もっとも韓国における遺跡は古代だけを意味しない。バスに押し売りも入ってこない(「観光バスに乗られますか?」)。日本には蚕のサナギのカンヅメは普通に商店に置いていない(「夜の求愛」)。日本ではタクシーの一斉ストライキなどは存在しない(「訳者あとがき」)。韓国旅行の時には感じないのに、小説を読むと感じるのは、当たり前のように、それが日本語で書かれているからに他ならない。少し怖い。









最終更新日  2019年09月20日 10時57分54秒
コメント(0) | コメントを書く
2019年09月10日
テーマ:本日の1冊(3011)

『「坊ちゃん」の時代』関川夏央 谷口ジロー アクションコミックス

思うところがあって、再読した。再読、再々読、再々再読に耐え得る漫画は少ない。その数少ない作品のひとつ。その度にもちろん発見がある。


ほぼ20年ぶりに読んだ。その間、私も経験をつんできた。p66の明治38年東京の街並みの風景。千駄木の漱石邸から東京帝国大学まで2キロほど歩いて通ったらしいが、私も2年前たまたま歩いて踏破した。確かに歩いて通えないことはない距離だ。約10人の群衆の中に1人洋装の紳士(漱石)、あとは車夫の2人、和服の侠客1人、和服の婦人3人、屋台の親父、和服の子供2人。本瓦の二階建て土蔵造の商家、後ろに晩鐘が見える。谷口ジローの誠実な仕事は驚くばかりだ。この時は際物扱いの連載だった。ここまで丁寧に描く必要はどこにも無かったのである。編集者も原作者も全5巻の長編になることなど考えもしていなかった。第2回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞。


この20年間に、私は本郷区丸山福山町の元樋口一葉が居たという長屋のあった階段を眺めたことがある。本書には、その同じ風景に、漱石と森鴎外、そして森田草平、平塚明子(らいてう)を配している。もちろん創作ではあるが、そんなこともあってもいいではないか、と思わせるのが「画」の力である。


漱石は、「坊ちゃん」のモデルとなったという車夫(坊ちゃん)と侠客(山嵐)、警視庁警視(赤シャツ)を思いつき、森田草平(うらなり)、山縣有朋(校長)、桂太郎(野だいこ)、平塚らいてう(マドンナ)などをモデルにして坊ちゃんを創作した、と関川は創作した。そうすることで、「坊ちゃん」が単なる痛快活劇ではなく、鬱々たる気持ちに居た漱石から見た明治の姿だったのだと世に問うた。思うに名作である。


赤シャツと野だいこは中学校すなわち日本そのものを牛耳りつづけるだろう。
坊ちゃんも山嵐も敗れたのだーしかし
坊ちゃんには帰るべきところがあった
それは清のいる家、すなわち反近代の精神のありかであった
(p238)

名作は1巻目までだった覚えがある。そのあとは、力作だが、冗長になった。






最終更新日  2019年09月11日 10時12分05秒
コメント(0) | コメントを書く
2019年09月06日
テーマ:本日の1冊(3011)

「蜜蜂と遠雷(上)」恩田陸 幻冬舎文庫

「おたくの業界(クラシックピアノの世界)とうちの業界(文芸業界)は似てるよね」と、開始早々、芳ヶ江国際ピアノコンクール審査員の三枝子の友人、ミステリ作家真弓は言った。コンクールの乱立と新人賞の乱立、どちらも斜陽産業、普段は地味にこもって練習したり、原稿を書いたりしている。
「コストが違うわよ」三枝子は反駁する。ピアノは金がかかるのだ。
でも、「世界中何処に行っても、音楽は通じる」そこは、作家は羨ましそうに三枝子に云う。おそらくこれきりの登場だったと思うが、真弓は作者の分身である。
そう!だから恩田陸という作家は言葉を使って「言葉の壁を越えて、感動を共有する」場面をつくるという無謀な試みに足を踏み入れたのかもしれない。言葉にならない感動を、言葉を使って表現する。でも考えれば、それは古(いにしえ)から文学が試みてきたことでもある。

ーーー結局、誰もが「あの瞬間」を求めている。いったん「あの瞬間」を味わってしまったら、その歓びから逃れることはできない。(25p)

風間塵、栄伝亜夜、高島明石、マサル・カルロス・レヴィ・アナトール。4人の紡ぐ音が非凡なこと、そして個性的なことは、読むだけで明確にわかった。

でも、それがホントはどんな音なのか、ましてや「あの瞬間」を私は味わう事が出来るのか?筋金入りの音オンチの私は全然イメージできなかった。でも、努力はしようと思う。幸いにも、図書館ウェブサイトの提供で「蜂蜜と遠雷」関連の曲集を見つけた。下巻に取り組むまでに、ちょっと練習してみようと思う。







最終更新日  2019年09月06日 20時06分31秒
コメント(0) | コメントを書く
2019年08月24日
テーマ:本日の1冊(3011)

「麦本三歩の好きなもの」住野よる 幻冬社

初、住野よる。
ふむふむ。まるで孫娘を愛でるように読ませていただいた。孫、居ないけど。
私は、ずっと前から、一生懸命頑張る女の子のお話が大好きだ。だからナタリー・ポートマンは「レオン」以来一貫して全作観ているし、AKBは何人か推しメンはいる(いた)し、「村上海賊の娘」は、そのキャラだけで一気に読んでしまった。序でに言えば、現在は同郷のゴルファー渋野日向子にメロメロである。あ、いや、三歩と全然キャラ違う、ってわかっております。でも、私から観たら皆んな同じに見える。少女が果敢に世界に向かって、前を向いている。

「その見方、甘すぎるんじゃないの?」と"おかしな先輩"は言うかもしれない。三歩はまるで少女マンガから抜け出てきたような「ドジな女の子」であり(まぁそれだけじゃない所がこの作者のキモかもしんないけど)、三歩を愛すべきキャラだとするのは買い被りだと言うのだ。確かに三歩を彼女にしたら、毎日が心配で堪らなくなるかもしれない。でも孫娘ならば、生きてくれているだけで嬉しい。

前の彼氏とは、どんないきさつで別れたのか?三歩の名前の由来は?聞けば教えてくれるんだろう。あわわ、と戸惑いながら。でも、それは次に会う楽しみにとっとこ。







最終更新日  2019年08月24日 06時44分21秒
コメント(0) | コメントを書く
2019年08月12日

「ポーの一族 ユニコーン(1)」萩尾望都 小学館

「ポーの一族」への40年以上に渡る想いや予想は、文庫本「ポーの一族3」にあらかた書いてしまった。予想通り、この(1)には、予想以上のことは幾つかしかなかった。もちろん、バリーという新キャラについてはまるきり予測できなかった。しかし、彼は「解」を導くための補助線みたいなものだ。

最大の予想外は、アランが生きているかもしれないということだ。悲しいけれど、これでシリーズが終わるだろう、という私の予想は変わらない。これからのことを、大胆に予想してもいいけど、それは自分の胸に秘めておく方が粋というものかもしれない。

「VOL1わたしに触れるな」は、過去作品のようにコマ枠を破って人や言葉や夢や時が溢れ出ていた初期の萩尾望都から比べると、まるできちんとし過ぎた舞台劇みたいで気に入らない読者が出てくるのは、ましてや顔つきもかなり昔と違うし、当たり前だと思う。けれども、このきちっとした構想を背景にしたセリフのひとつひとつは、やはり初期の萩尾望都の特徴でもあるのだ。1巻目を最後まで読んで、もう一度VOL1を読み返すと、あら不思議、8割方意味がわかるだろう。わからないところが、次巻の核心部分だとも予想できるだろう。次巻が楽しみだ。






最終更新日  2019年08月12日 09時24分30秒
コメント(0) | コメントを書く
2019年08月11日


「ポーの一族3」萩尾望都 小学館文庫

「ポーの一族」の新作が刊行された。噂によると、最終編『エディス』の 正当な続編らしい。それで急遽これを取り寄せた。そうせざるを得なかった。読む前に、ファンとして私の40年間のあれこれの妄想を、もう一度整理しておきたかったからだ。

以前、前回の『春の夢』連載開始時に復刻版『小鳥の巣』を紐解き、こう書いた(16.6.25記入)。

「現在キリアンがドイツで生きているならば、おそらく71歳。ドイツ統一のために闘って来たのではないかと(勝手に)想像する。」
「キリアンは微かにマチアスに噛まれて仕舞う。萩尾望都はついつい書いて仕舞った。『パンパネラの血は、キリアンの体内に深く沈んで存在した。それは潜在的な因子として子孫に受けつがれてゆき‥それはもっとのちの話となる』この記述があるがために、「ポーの一族」ファンたちは、一生「続編」を待ち望む「呪い」をかけられてしまった。もちろん、私にも。その呪いは未だ解けていない。」

つまり現代は、ポーの一族が再び現れるならば、キリアンの14歳の孫の前に出現しても可能な時代になっているのだ(晩婚化が進んでいるからちょうどいいだろう)。ちなみに『小鳥の巣』はシリーズの中でも屈指の傑作である。

その妄想を膨らますために、1976年当時の『エディス』を読んだわけだ。この時点で、アランはエディスを助けるために消滅してしまったことになっている(ロンドンでの事件)。「消滅」するのである。マチアスは肉体どころか靴さえも消滅してしまった。だとすれば、他の次元に移るとした方が正しいのかもしれない。この本には、そのほかに1966年にエドガー研究家のオービンが関係者を集めた『ランプトンは語る』も収録。時系列の歴史を解説した便利な本になっている。しかし、最初に読むべき本ではない。文庫本なのであまりにも画が小さいのだ。あれから40数年。オービンは当然、エドガーについての総括的な一書をしたためているはず。エディスは50歳後半だ。テオの血液研究はどうなったのだろうか。66年当時に血液保存技術はないだろうから、成果も出ずに終わった可能性が高い。

『春の夢』(2017年刊行)も、当然この「続編」のために準備されているはずだ。改めて読み直す。ポーの一族の間の中のいろんなランクと、消滅への危機感を持ったクロエのような人物がいることが明らかにされている。ポーとはまた別系統の異能種のいることも明らかになった。「ポーの一族」とは何なのか?それが最終的に明らかにされるのが、最終章になるはずだ。それを意図して始めたのが『春の夢』だろうと、今なら想像できる。

『春の夢』の中にいくつもヒントがある。ファルカは言う「(アランがすぐ眠るのは)"気"のヒフが薄いんだよ。すぐシューシュー漏れちまう」。吸血鬼とは実は病原菌とかの生物が中に入ってなる病気ではなかった。気はエナジーとルビを振る。だとすれば、バンパネラの正体は、エネルギーだ、ということになる。ファルカは瞬間移動が出来る。だとすれば、バンパネラの存在は、異次元の存在なのかもしれない。それから、大老ポーが老ハンナを仲間にしたのは、8世紀だ。一体何があったのか。一方、ファルカはウクライナ・ポーランドの「紅いルーシー」という一族。800年(600年かもしれない)も生きている。さらにルチオというギリシャ系の一族さえいる。紀元からいると言われる「さまよえる者」がホントだとしたら、本当の起源は2000年前から居るのかもしれない。

しかし、バンパネラの正体だけならば種明かしに過ぎない。エドガーの約240年間にわたる、魂の遍歴の意味を明らかにするのが、最終章の役割のはずだ。

それにしても、本当に終わるのだろうか?今、あらゆる情報は今回が「ポーの一族最終章」だと囁いている。知りたいのと、知りたくないのと、半々だ。「カムイ伝」「火の鳥」と未完に終わった名作を抱えて、私たちは長編漫画の夢の中を生きてきた。その正当な継承者である萩尾望都が「終わらす」と言うのならば、やはり私たちはそれを真正面から受け止めなくてはならないのかもしれない。襟を正そう。そして、新章を紐解こう。






最終更新日  2019年08月11日 10時07分43秒
コメント(0) | コメントを書く
2019年08月09日


「健康で文化的な最低限度の生活8」柏木ハルコ 小学館

読んだ漫画を全てレビューしていたらきりがないので、私は漫画の場合は時々まとめて書評を書く。しかし、この漫画だけは全巻感想を書いている(序でに購入さえしている)。漫画として飛び抜けて素晴らしいわけではない。しかし、一巻一巻きちんと対峙しないと、ここで描かれている事に対して申し訳ないと思うからである。そう思わせるだけの「取材」を柏木ハルコはしているのだ。

今回は「子供の貧困完結編」である。間違ってはならないが、このシリーズはノンフィクションではない。しかし、フィクションだから描ける真実があると思う。最初取りつく島がないように見えた佐野さんも、DVを受けて二児の母として、恋人にも逃げられ自暴自棄になっていたと判明。そう言う複雑な状況を2巻かけてゆっくりと見せている。恋人との間にできた赤ちゃんを産むのか産まないのか、栗橋さんがどう対応するのかが、この本のクライマックスだった。主人公義経えみるだと、この複雑な状況をさばけなかったかもしれない。

それと同時に不正受給問題で登場した欣也くんのその後も描かれる。貧困の子供は、はたして大学や専門学校に行けないのか?

『現在、7人に1人の子どもが貧困状態にあると言われている。子どもの貧困は子ども本人には全く責任がない。では誰の責任か?父親か?母親か?』『両親が離婚し、母子家庭になる。父親が養育費を払わない。母親は子育てのため正規の職に就けず、不安定な仕事を掛け持ちする。教育には金がかかり、公的な支援は不十分なまま』という栗橋さんの呟きの後ろで、よく見ないとわからないが「子どもがいるひとり親世帯の相対的貧困率」や「教育支出の対GDP比(公費負担及び私費負担の合計)」等々のデータが載っている。西欧や南米諸国と比べて、日本は最下位だ。チェコやチリよりも、日本は劣っているのだ。もちろん、佐野さんの元夫は酷い男だったと思う。欣也くんは進学したいけど、なかなか学力が追いつかない。しかし、それを含めて「支援」するのが国の責任だと、私は思う。戦闘機に一機100億円以上も払い、さらに百数十機も買いますよと大盤振る舞いするよりも、こちらにお金をかけるべきだ。その方が未来の国家に向けて、よっぽど「戦略的」だと私は思う。






最終更新日  2019年08月09日 19時12分40秒
コメント(0) | コメントを書く
2019年08月07日
テーマ:本日の1冊(3011)


「死にがいを求めて生きているの」朝井リョウ 中央公論新社

初、朝井リョウ。物心ついた頃からゲームやSNSがあって、ゆとり教育やら同調圧力があるのを当たり前の社会だと思って生きてきた世代の、それでも対立と和解をどう解決して行くのか、探って行く物語。のように思えた。納得できなかった。以下、なぜかを述べる。

「俺は、死ぬまでの時間に役割が欲しいだけなんだよ。死ぬまでの時間を、生きていい時間にしたいだけなんだ。自分のためにも誰かのためにもやりたいことなんてないんだから、その時々で立ち向かう相手を捏造し続けるしかない」(398p)

「自分のためにも誰かのためにもやりたいことなんてない」なんて、平成生まれのこの子は、どうしてそんな風に自分のことを思ってしまうんだろう。どうして、いつも誰かにどう見られるかが、何かの基準になるのだろう?こんなに若いのに、何を焦っているんだろう?丁寧にその心理を幼少の頃から辿っているはずなのに、やはり私にはピンとこない。

組み体操のピラミッド存続問題やRAVERSや大学寮存続問題、無人島仙人問題など、現実にあった問題からモチーフを「強引に」自分のテーマに引き入れる書き方は、感心しなかった。揶揄はしていないが、あの事柄をある程度知っている人にとっては、揶揄されていると怒るかもしれないような書き方もあった。安藤くんじゃないけど、この作者に対しても「こうやって喋って満足するだけのおままごとはもう、終わり」にしよう、と言いたくなる書き方もあった。朝井リョウは何を焦っているんだろう? 自分に求められている「役割」を過剰に意識し過ぎているんじゃないか?こんな風にホントにあったことをなぞるならば、表層だけを見るんじゃなくて、「核」の部分を描いて欲しい。その表現、作者は、その部分で1番もがいているのかもしれない。そこは伝わってくる。でも、まだ足りない。決定的に何かが足りない。人気作家だけど、こんな感じならば、認めるわけにはいかない。








最終更新日  2019年08月07日 12時15分05秒
コメント(0) | コメントを書く
2019年08月04日
テーマ:本日の1冊(3011)


「将軍」芥川龍之介
おそろしいはなしです。
青空文庫で、20分ぐらいで読めます。
伏せ字だらけ、芥川だけでなく、なにやらいろんな方の怨念が棲んでいそうな文章です。

大正10年の発表。N将軍と書いていますが、誰が読んでも日露戦争を勝利に導き、明治天皇崩御の際に殉死した乃木希典について書いたと分かる小説です。

日露戦役での将軍の白襷隊への激励、戦時に間諜を発見する将軍、慰問団劇にクレームをつける将軍、亡くなった後に青年が持つ違和感の四章で成っています。

乃木の殉死については、漱石も(「こころ」)鴎外も(「阿部一族」)それなりに反応を示した大事件でありました。「なんか嫌な感じ」と文豪たちは思ったのだと、私は解釈しています。

乃木希典は、決して自ら「死んで神様になりたい」と言ったことはないと思います。芥川も、この作品で一言もそういうことは書いていません。ただ、最後の青年の違和感と、この作品の5年前に「乃木神社」が建てられ、実は現代まで綿々と「格式ある神社」として続いているという事実を知るにつけ、なんかこの日本という国が、私はおそろしいのです。

最後に第2章「間諜」の一節。
将軍に従った軍参謀の一人、──穂積中佐は鞍の上に、春寒の曠野を眺めて行った。が、遠い枯木立や、路ばたに倒れた石敢当も、中佐の眼には映らなかった。それは彼の頭には、一時愛読したスタンダアルの言葉が、絶えず漂って来るからだった。
「私は勲章に埋った人間を見ると、あれだけの勲章を手に入れるには、どのくらい××な事ばかりしたか、それが気になって仕方がない。……」







最終更新日  2019年08月04日 06時36分04秒
コメント(0) | コメントを書く
2019年08月03日
テーマ:本日の1冊(3011)


「桃太郎」芥川龍之介
おそろしいはなしです。
芥川龍之介の書いた変わり種「桃太郎譚」。青空文庫で10分ぐらいで読めます。

黄泉比良坂でイザナギが追っ手を防ぐために撃った桃は1万年に1度成るというもの。その桃は核に赤ん坊を孕んでいたそうな。

そこから産まれた桃太郎。現在人口に膾炙している彼とは真反対、ニートの食いつぶし、サイコパス紛いになって、平和に暮らしている鬼ヶ島へ侵略戦争を仕掛けるというお話です。

降参した鬼が桃太郎に、どうして私たちを征伐に来たんですか?と尋ねた時に桃太郎はこう答えています。

「日本一の桃太郎は犬猿雉の三匹の忠義者を召し抱えた故、鬼が島へ征伐に来たのだ。」
「ではそのお三かたをお召し抱えなすったのはどういう訣でございますか?」
「それはもとより鬼が島を征伐したいと志した故、黍団子をやっても召し抱えたのだ。──どうだ? これでもまだわからないといえば、貴様たちも皆殺してしまうぞ。」

見事な二段論法。まるでどこかの国の首相のようなはぐらかし答弁です。これをどこかの国のパロディとみるのか、どこかの会社のパロディとみるのか、単なるギャグとみるのか、は貴方次第。芥川龍之介はこれを書いた3年後に自殺しているのですが。
大正13年、「サンデー毎日」初出。







最終更新日  2019年08月03日 11時52分07秒
コメント(0) | コメントを書く
このブログでよく読まれている記事

全434件 (434件中 1-10件目)

1 2 3 4 5 6 ... 44 >

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

KUMA0504@ Re:北斎のたくらみ 富嶽三十六景(09/02) 令和皇太子さんへ。 貴方がどんなコメント…
KUMA0504@ Re[1]:北斎のたくらみ 富嶽三十六景(09/02) ももたろうサブライさんへ ありがとござい…
KUMA0504@ Re[1]:100分de名著 小松左京(09/01) ももたろうサブライさんへ そうかもしれな…
ももたろうサブライ@ Re:100分de名著 小松左京(09/01) コンピューター付きブルドーザーと言えば…
KUMA0504@ Re[1]:「タッチ」の続編?「MIX」(05/25) ガラケーさんへ わざわざ心配ご指摘ありが…
ガラケー@ Re:「タッチ」の続編?「MIX」(05/25) 貼ってあるMIXの画像は… きちんと、あだち…
KUMA0504@ Re[1]:「おにぎりの文化史」古代の食卓(08/23) はんらさんへ 「家で作ることはほとんどな…

バックナンバー


Copyright (c) 1997-2019 Rakuten, Inc. All Rights Reserved.