若狭舞鶴への旅その一
なんとか小さな休みが取れたので、小旅行をしました。今まで一回も行ったことがないから、北陸へ。その入り口の福井県若狭に行ってきました。やっぱり『古代と平和を訪ねる旅』になってしまう私でした。初めてのETCです。吹田が25キロの渋滞というラジオ情報を聞いて、急遽コースを変えて舞鶴若狭自動車道を通って行くことにしました。正解でした。行程が短くなり、途中の追加料金もかからずにすみました。小浜西ICで降りて若狭三方の縄文博物館へ。途中、私市円山古墳が高速のトンネルの上にあるのを見つけました。高速を作るときに発掘されたのでしょうね。製作直後のように円筒埴輪が周りを二重に巡って、きれいに復元されています。古墳にとってよかったのか悪かったのか。そして、当時山頂にどうしてあれだけの古墳を作る必要があったのか。それはそれでドラマがあったには違いない。去年加曾利貝塚の博物館に行ったので、二度目の縄文時代専門博物館でした(2000年開館でまだ新しい)。西日本には、縄文遺跡が少ないので、このような博物館はとても新鮮でした。本当にこの縄文時代は豊かでかつ高度な文化があったのだということを確信できる展示でした。写真は泥層に埋没していた杉の根です。ここには豊かな杉林があったということです。泥層に埋没していたからこそ残りました。そのように水の中にあったからこそ、残った木製品が大量にあって、ここは縄文時代のタイムカプセルとなったのです。世界最古の稲作遺跡である中国のカボト遺跡の遺物と類似した漆あるいは布などの遺物が多数出土しているこの貝塚は、ここで稲作が同時期に始まっていても決して不思議ではなかったのです。けれども始まらなかった。説明文には二つの理由があると書いていました。ひとつは稲作に適した広い湿地がなかった。ひとつは稲作を必要としないほど、食物が豊かだったのです。再現ドラマやジオラマ、丁寧な展示を見ると、木や布の加工技術は鉄製品がないのにもかかわらず、サヌカイトや石斧その他専門用具を使って非常に精巧に作られています。刺激をたくさんもらいました。うれしい言葉がありました。『縄文の心は平和の心』私の想いと同じです。この遺跡には戦争につながる遺物はついに発見されていないのです。弥生時代から基本的には戦争は始まった。つまり人類の歴史から言えば、つい最近始まった。だからこそ戦争は無くすことができる。何がないのかを発見する。それも大切な発掘です。遅い昼食。近くの縄文プラザで『ダチョウ串カツ御膳』(1,100円)を食べました。ごはん古代の赤米でした。ダチョウの肉は豚のひれ肉のさらに脂肪分がない部部みたいな味でした。食堂からは国際的に重要な湿地として、ラムサール条約に基づく登録湿地となっている三方五湖を眺めることが出来ました。いまはこんな石碑しか残っていません。すぐ近くに川が流れ、山と山とに挟まれた平野がずっと続いています。弥生時代にかけて湿地地帯になったことがこの遺跡を守りました。観光地図にあった脇袋古墳群というところに寄って見ました。五世紀の前方後円墳や円墳が五つほど集中しています。ここは後から行く熊川宿のように古代から交通の要所として栄えたところだったのでしょう。面白かったのは西塚古墳という前方後円墳。見ると分かるように前方部分がそっくり削られて田んぼになっています。けれども、形だけはみごとに残っている。とうやら昭和18年に国指定になったみたいで、土地の百姓も代々この形は守らないといけなかったのでしょう。バチ型の土地を苦労して米を植えているさまをちょうど刈り入れが終わったところなので綺麗に撮る事ができました。近くのおじいさんに聞くと「わしは80年近くここにいるけど、田んぼはずっとこの形じゃった」という証言を得ることができました。少なくとも、80年は《バチ型》の田んぼは守られたのです。古墳自身にとってはほんの一瞬の出来事だろうと思います。熊川宿をそぞろ歩き。ここは小浜から京都に向かう鯖街道の重要な宿のひとつでした。古代、若狭は朝廷に食料を献上する御食国(みけつくに)のひとつでした。日本海で獲れた魚や貝が遠路はるばる京都に運ばれ、特に18C後半からたくさんの鯖が若狭の海で陸揚げされ、『鯖街道』と称されるようにもなったのです。宿のひとつにこんな表示を見つけました。ちいさく「わかさ九条の会」という文字が見えます。がんばっているんだね。うれしくなりました。熊川宿で一夜の泊を尋ねると、宿泊施設はすでに埋まっている。すぐ近くの山の上の宴会ホテルに泊まりました。夕食は断って、熊川宿で買ったつまみで一杯。この鯖缶詰を買った食料品店のおばちゃんは「この缶詰は小浜ぐらいでしか売っていない。400円するんだけど350円にしてあげる。一度食べてごらん。ほんと美味しいから。お土産にいいよ。」と、言っていましたが、本当に美味しかった。唐辛子が入っていて、ピリ辛だけどあまり辛くなくて、旨みが濃い。そうして土地の食べ物は土地の酒にあう。甘口のお酒「わかさ」とよく合った。熊川宿のきく家製造の焼さば鮨もおいしゅうございました。満足です。