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カテゴリ:サスペンス
監督 デヴィッド・フィンチャー 主演 ブラッド・ピット モーガン・フリーマン 前回に続いて、結末に落ち込む映画です。 ある荒廃した街に赴任してきた若い刑事ミルズ(ブラッド・ピット)と、その町を知り尽くすベテラン刑事サマセット(モーガン・フリーマン)が、キリスト教の「七つの大罪」になぞらえた連続猟奇殺人事件解決に挑む姿を描いたサスペンスミステリーです。実はもうひとり犯人役で、アカデミー賞受賞経験がある大物演技派俳優が出演していますが、わざとオープニングクレジットに名前を出してないくらい秘密にしていますので、ここでは触れないようにしておきましょう。 「七つの大罪」とは、「GLUTTONY(暴食)」「GREED(強欲)」「SLOTH(怠惰)」「LUST(肉欲)」「PRIDE(高慢)」「ENVY(嫉妬)」「WARTH(憤怒)」(映画登場順)のことで、ダンテの「神曲」では、これに合わせた煉獄が登場しわかりやすいです。また、キリスト教とは関係ないのですが、漫画「鋼の錬金術師」には、この七つの名前をつけられ、名前通りの性格の人造人間(劇中では「ホムンクルス」と呼ばれています。もちろん悪役です。)が登場し、意味がよくわかります。何しろ、グリトニーは見るからに大食漢の体型で、人間でもなんでも食べてしまいますし、グリードは強欲すぎて、全てを支配する力を欲しがり、自分のボスも裏切ってしまうほどです。 「GLUTTONY(暴食)」は、非常に太った男でした。イスに縛りつけられ、机上の食べ物に顔を沈めて死んでいました。口内には食物が詰まっており、胃が破裂するほど押し込められていました。非常に長時間にわたって食べさせ続けられたようです。冷蔵庫の裏に脂で書かれた「GLUTTONY」の文字がありました。 「GREED(強欲)」は悪徳弁護士でした。自分のオフィスで、ちょうど1ポンドの肉を切り取られて殺されていました。切り取られた肉ははかりに乗っていました。「ベニスの商人」ですね。床に被害者の血で「GREED」と書かれていました。 「SLOTH(怠惰)」は麻薬の売人でした。自室で発見された時、舌と左手を切り取られ、ベッドに縛り付けられていました。ガリガリにやせ、生気のない顔から死体と思われましたが、生きていました。室内にはだんだん衰弱していく様子を写した写真が1年前のものからありました。もちろん「SLOTH」の文字も書かれていました。 「LUST(肉欲)」は娼婦でした。SM系革製品の店で作らせた刃物のついた特別な道具を通りすがりの男に装着し、拳銃で脅して無理やり性交させ、陰部を貫かれて殺されました。ドアに「LUST」と書かれていました。 「PRIDE(高慢)」は美人モデルでした。「PRIDE」と書かれた壁の前のベッドで顔をひどく傷つけられて死んでいました。左手には睡眠薬、右手には電話を持たされていました。傷ついた顔で助けを呼ぶか、それとも死ぬか、自分で選ばされたようです。 ここまでで、犯人は自ら警察署に出頭してきます。でも、ちゃんとあとの2つ「ENVY(嫉妬)」と「WARTH(憤怒)」も達成するのですが、語るのはやめておきましょう。非常によくできた話で、結局は犯人の計画どおりにすべて進んでいき、七日間ですべて終了します。自首するのも計画のうちで、納得しますが、やるせない気持にもさせられます。 舞台設定も、暗い気持ちにするのに一役買っています。前半はずっと雨です。しとしと雨の降る中、2人の刑事の背景には、どこも薄汚れた感じの建物ばかりで、路地にはゴミがいっぱいあります。治安も良くない感じです。訪れる現場はどこも薄暗く、必ず懐中電灯の光で捜索させられます。ミルズの新しいアパートは、地下鉄を電車が通るとひどく揺れる部屋でした。 ミルズ刑事は、非常に直情的な性格で、考えるよりもまず行動するタイプです。犯人に対し、非常に怒っています。サマセット刑事は、定年退職まであと1週間で、沈着冷静で、粘っこく手がかりを探すタイプですが、この荒廃した街に対し、さめた気持ちを持っている感じです。ミルズの妻トレイシーは、引っ越してきた街の雰囲気に慣れることができず、サマセットに相談したりしています。 この2人の刑事をモデルに、「踊る大捜査線」の青島刑事と和久刑事のコンビが作られたそうです。そういえば、「踊る大捜査線ザ・ムービー」の、小泉今日子が湾岸署に乱入してくる場面は、この映画の犯人が自首してくるシーンにそっくりです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.08.18 23:41:36
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