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だだもれ堂筆記

だだもれ堂筆記

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2014.08.10
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カテゴリ:旅行けば
ほうろうさんからリクエストのあったトルファン軽トラツアーの話。何せ30年近く前の話なので、今のトルファンの現状とは全く違う(はず)。その点ご注意を。

1980年代の中国。今のような極端に歪な経済発展が始まる前夜、都会といえどまだ全体がくすんでいて、北京ですら自動車がまばらにしか走っていなかったあの頃。流しのタクシーはほとんどなくて、つかまえられるのは高級ホテルの前か空港や駅前ぐらい。サービス業もこってりと親方日の丸、国営だと商店も食堂もホテルも「没有」と言われるのが前提で、食堂やレストランも食事時の1~2時間のうちに入らないと閉まってしまう、そんな時代。

トルファン入りしたのは7月。暑い季節だった。鉄道駅からトルファン市街地までは恐ろしく遠く、いつ来るか分からない路線バスしかなかったのを覚えている。
当時外国人が泊まれるのはトルファン賓館とCITS(21世紀になるまではそれなりにぶいぶい言わしていた中国国際旅行社。当時列車や飛行機のチケットは外国人が直接窓口に行っても永久に手に入らないのではないかというぐらい取り難く、業腹ではあったが外貨兌換券を使い手数料を払ってここに頼むと割と容易に手に入った。当時は外国人料金があって人民料金の倍だったが、中国長期滞在の留学生や外人教師の身分証を持っていれば人民料金で買えた)オフィスが入っている高級ホテルのオアシス賓館ぐらいだった。

自分はもちろんドミトリーのあるトルファン賓館にチェックインしたが、この宿の旧舘の4人部屋は天井がトンネルのようなアーチになっていて、天井のファンが回っているとそれなりにしのぎやすかった。同室はオランダ人女性2人組で、彼女らが暑い暑いとパンツ一丁で部屋の中を歩き回っていたのはさすがに真似できなかった。彼女らと部屋でハミ瓜やスイカをシェアして食べたなあ。
当時のトルファン、昼食は市場や小さな店などでラグメンやシシカバブなどを食べることもできたが、外食で朝食や夕食を食べる場所がほとんどなかった(もしくは外国人には分からなかった)ため、宿で朝夕の食事をとっていた。食事時になると食堂に外国人が集まってきて、1人旅だったのでそこで知り合った人と情報交換するいい機会だった。
トルファン賓館は中庭を囲むようにいくつかの棟があって、夜になると中庭でウイグルの伝統芸能が演じられ、宿泊客やオアシス賓館のツアー客などが夜な夜な集まってきていた。当時は自由に見られたが、数年後再訪した時には外から見えないよう幕で周りを囲み、入場料金を取るようになっていた。

トルファン賓館は宿泊料金の安さでバックパッカーのたまり場になっていて、そういう外国人相手の商売のひとつがウイグル人が個人的にやってる軽トラツアーだった。
食堂で知り合った日本人から「あと1人参加すれば1人15元(当時の公定レートで600円)でトラックの1日トルファンツアーに行けるんだけど」と声をかけられ、それは自分でツアー探すよりらくちんだねえ、と乗ることにした。

朝9時、といっても北京時間なのではるか西のトルファンはまだ早朝。この時間だと炎熱のトルファンも涼しい。日本の軽トラより少し大きいぐらいのトラックには幌がかけられ、両サイドに木のベンチが置いてある。ここに7人が座ってツアー出発。メンバーは全員外国人。日本人とかカナダ人とか香港人とか。

トラックは舗装されていない道をがたがたと走る。最初に着いたのは町の西にある交河故城。
交河故城は川に挟まれた台地上にあるのでそれほど広くはないが、ここには1時間近くいたと思う。まだそれほど暑くもなかったし、日干しレンガの建物が比較的良く残っていて、ゆっくり見ることができた。
入場券を買った記憶は無いが、入り口はひとつ(そういえばこの入り口の脇にジュースとか飴とかを売る小さな店があった気がする)だったのでもしかすると5角とか3角とか払ったのかもしれない。

そのあとはカレーズ(地下水路)へ。中東の砂漠にあるのと同様、地下道に水を引いたもの。水量もあの頃は多かったし、冷たくてきれいだった。当時は普通に地元の人が水を汲みに来ていて、当然入場料とか無し。子供がコップに水をくんで差し出してくれたのを思い出す。冷たくて美味しかった。水筒があればくんで帰りたかった。

かなり早い時間の11時ごろに昼食、ということで葡萄溝へ。ここはぶどう栽培を観光資源にしているところらしいが、当時はさして観光地という感じでもなく、国営ならではのやる気の無い雰囲気。食事も殺風景でがらんとした建物であてがいぶちの何故か中華料理(笑)。あ、でも葡萄がちょっと出たかな。ここでの食事は別料金だったと思う。
ぶどう棚はいい感じだった、がぶどう棚なら宿泊していたトルファン賓館からメインの通りに出る道路の歩道にも日除けがてらにかずっと連なっていて、あんまり有難みは無かったなあ。
それよりも水分補給(レンガ茶をお湯で煮出したもの)できたのは実はここが最後だったがその時はまだその恐ろしさに気付いていない。

ふたたびでこぼこ道を走って時々跳ね上がりながらベゼクリク千仏洞へ。当時は2時間ぐらいかかったと思う。
火焔山(がまさにその名の通りであることは後に実感)の中の川沿いの崖に彫られた仏教遺跡で、13世紀にウイグルがイスラム化するまでの数百年間に渡って造営されていた。破壊されたり外国人に持ち去られたりで当時の面影はあまり残っていないが、一部の壁画が見られる。私が行った頃はまだ補修などはほとんど進んでいなかったはず。そういやここって文革の影響はどうだったのかなあ。
日陰の椅子に腰かけていたやる気のあまり無い感じ(笑)のウイグル人のおっちゃんが門番で、入場料(5角ぐらいかな)を取り、鍵束を持っていくつかの石窟の扉を開いてくれた。明かりがないので中は薄暗く、壁画の細部までははっきり見えなかったが、千年前の絵と自分が向き合っているのが不思議な感じだった。
崖の陰になっているところは涼しく、おっそろしく青い空とベゼクリクの乾いた土の色と眼下の川沿いの緑のコントラストが美しかった。

次は南下して高昌故城。ここは平地に城壁を築いて造られた都市。入場料は無かった気がする。中を全て歩いて回るのは大変そう、しかもここに行ったのは午後のものすごく暑い時間帯だったので、入り口の近辺をしばらくうろうろして終了。
数年後ここを再訪した時にはウイグル人のおっちゃんがロバ車で高昌故城を回るという商売やってたので乗せてもらって回ったが、実は結構広かったのをその時知った。そういやそのウイグル人のおっちゃんがずいぶん漢族の悪口言ってたなあ(笑
高昌故城は交河故城に比べて風化が激しく、建物の形がかろうじて残る程度。玄奘三蔵がインドに向かう途中立ち寄ったのってこの国で、帰りに寄ったら国が滅びてたっていう無常の象徴みたいな土地。

この辺りでそろそろ喉がかなり渇いている自覚あり。日が傾いている頃とはいえ、当時の高昌故城は日を遮るものが何も無い推定気温43度のひと気の無い土地。もちろん売店なども無かった。ふと腕を見ると白く粉を吹いている。塩だし(笑

高昌故城の近くにアスターナ古墳群。
小さな建物、おそらく管理人の家になっているのだろう、ウイグル人の子供たちが家の前の日陰に座っていた。なんか適当に見てって、って感じで結構いい加減だったけど入場料は払ったはず。建物の前にはがらんとした広い土地が広がっていて、ぽこぽこ盛り上がった小さな土饅頭があちこちにある。そのうちの2つが見学できた。
どちらもおなじように地下に向かって緩やかに傾斜する階段を降りてぼんやり裸電球に照らされた古墳内に入る。外よりもひんやりしているのがありがたい。
1つは中には何も無いが壁画が描かれ、もう1つはむき出し(!)のミイラが2体置かれていた。説明書きには夫婦とあったが、まさか彼らも死んで数百年後に他人様がどかどか入り込んできて自分のミイラを見られる羽目になるとは思ってもいなかっただろう。ミイラになって久しいはずなのに、そこはかとなく臭いがした。そういうもんなんだろうか。
なお、このミイラは数年後再訪した時にはガラスの箱に入っていたがやっぱり臭いはあった。

これでトルファン1日ツアーはおしまい。日はかなり傾き、火焔山のふもとをトルファン市街地に向かって走った。喉が渇いてこりゃヤバいわ自分状態にはなっているが、まだ若かったので気分が悪くなるとかいうことは無かった。しかし道路は悪いし車も当時の小型トラックなのでそんなに飛ばせない。
夕日に赤く染まる、まさしく炎のような山肌の色が暑さを更に増幅させる。いったい火焔山の連なりはいつ切れるんだ、と思いながらトラックに揺られていたがさすがに疲れていたのか時々うとうとしていたようで、記憶が飛んでいる。

宿に到着、速攻で中庭の売店に駆けつけ、冷やしてある紙パックのハミ瓜ジュースを3本買って一気飲み。あれは美味しかった、そんなに美味しいジュースじゃなかったんだけどあの時ばかりは天国の味だったなあ。
んで今度はシャワー。塩でむずがゆかった体がさっぱりして、まさに生き返った気分だったことだよ。

なお今のトルファンの名所はどこも虚仮脅しの要らない余計な建物建てて結構な入場料取ってるみたいなので、私のような適当なツアーはもうできないだろう。
いろいろ大変だったけど実はいい時に行ったのかもしれないな、と思っている。





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最終更新日  2014.08.10 13:49:44
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