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カテゴリ:言葉
近年の「コトバ」に関する話題です。
平成21年度『全国学力・学習状況調査』中学校の国語A1「鑑賞文を書く」の問題です。 「この絵の特徴は、どの角度から見ても女性と目が合います。」は「この絵の特徴」と「目が合います」との言葉の関係が不適切です。この分の内容を変えないように、「合います」の部分を適切に書きかえなさい。 中学3年生の正解率は約半数、50%でした。 国語最初の問題なので、作成者も「簡単な問題」をまず解いてから、というつもりで出題したようです。 しかし、なんと半分の生徒しか正しく言い換えられていませんでした。 報告書によれば、「合ってしまいます」「合う」「合います」などの誤答が目立つ。つまり、「特徴は」という主語に対応しない述語を答えているわけです。 本来は「合うということだ」「合うことです」などと、主語に対応する言い方に改めなければ成りません。 出題者は「主語と述語との体覆う関係」を聞いているのに、答える生徒は「文末表現の問題」と解釈しているようです。 近年の中学生は「主語と述語との対応関係」にはあまり注意していない、ということが言えるでしょう。 抽象名詞を主語とする文は、述語との対応関係をしっかり意識していないと「おかしな言い方」を生み出す場合がよくあります。 例えば、「将来の夢は宇宙飛行士になりたいです。」がそうです。 では、なぜこうした「主語をあまり意識しない述語表現」が違和感なく用いられるのでしょうか。 一つは、「書き言葉の退化、話し言葉の優先」という状況があります。現代では、より話し言葉優先の傾向が進んでいると言えるでしょう。 「この絵の特徴はね。どこから見ても中の女性と目が合うんだよ。」といった、こま切れの会話文からの連想が働いていると考えられます。 少し長い文になると、主語と述語との関係はさほど気にしなくなってしまう傾向があります。 「私は…」「あなたは」…という単純な主語の場合は問題ないのですが、抽象名詞や無生物主語となると、述語の乱れはより顕著なものとして表れます。 もうひとつは、「日常使う言葉の短文化」という傾向が指摘できます。 言うまでもなく、現代中高生の間では、メールやライン、チャットなど、短文のやりとりが日常化しています。「長い文を書くことも、読むことも少なくなってきている」現代人の日常が反映されている気がします。 古文がそうであるように、日本語はもともと主語をあまり明確化しません。 主語と述語とを正しく対応させることが日本語を使う上でどうしても必要かというと、それもいかがなものかと思います。 ただ、現代中学生が「特徴は…」「夢は…」という主語を使って、きちんとした日本語を使うことが出来なくなってきていることは、調査で明らかになっています。 願わくは、メールやラインのような「普段使いのコトバ」と、文章用語としての「書き言葉」とが使い分けられる、そんな能力を身につけてくれれば、と思っています。 さらに、「長い文章を読む力」も含めて、きちんと日本語を学ぶことを考えるようになれば、今回の話題もよしとすべきでしょう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013年02月06日 19時05分46秒
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