テーマ:ミステリはお好き?(1432)
カテゴリ:本の話(日本の作家・わ行)
先日の『死んでも治らない』(感想)につられるように、若竹七海作品を読みました。
ちょっと中毒ぽいです(笑) 初期のものですが現在は絶版で、作者も再販の意思がないとのこと。 以前から気になっていたのですが図書館で借りることができました。 水上音楽堂の冒険 (品切絶版) 絶版ゆえ表紙画像が手に入らなかったのですが、どうしても見ていただきたくて自分で撮りました。 卒業を間近に控えた学園を舞台に、密室状況下の殺人を巡る推理と冒険。気鋭の作家が新境地に挑んだ長編第2弾。(「BOOK」データベースより) 幼馴染の高校生、真魚と冬彦の大学合格発表のシーンから物語は始まります。 卒業を間近に、進路も決まって明るい気分の彼ら。 もう1人、幼馴染で高校までずっと親しく付き合ってきた坂上も別な大学に進学が決まっており、所属する合唱部の卒業コンサート準備に追われています。 成り行きから手を貸すことになった真魚と冬彦でしたが、会場となる高校内の<水上音楽堂>で殺人事件が起こります。 なんと坂上が容疑者に。 そんなはずはないだろうと、無実を証明するために奔走する2人だったのですが… 表紙には、制服で微笑む3人の高校生が描かれています。 水彩画の色合いも、描かれた表情も爽やかで、いつまでも心に抱いていたい青春の1こまそのもの。 その印象と、序章部分の明るさに、光原百合『遠い約束』を思い出しました。 恋を語る友人、暴言を浴びせる同級生、部活の先輩にあこがれる下級生、友人と初恋の間の微妙な空間… 高校生活のさまざまな場面が描かれて、つい同じような、制服を着て過ごした日々が胸にあふれてきました。 つい先日、娘が卒業したばかりだったのも私を感傷的にしたようです。 なんだかし忘れてきたことがあるような、セーラー服と一緒にふわりと手放してしまったものがあったような、そんな気分にすらなったのです。 しかし。 やはり、これは若竹七海でした。 明るくて切ない学園ミステリだと思っていたら、見事な苦さでした。 暴言も初恋も、すべてねじれて真相へと繋がります。 真相は悪意の奥の奥にありました。 見なくとも良い、見ないほうが良いそんな暗幕の向こうも、開けて見ずにいられないのがまた青春だとすると、本当にやるせないものがあります。 慈しんですごしてきた18年の歳月を、 すべて白紙にしてしまうことを想像すると、痛すぎます。 そしてまた、 しっかりした一人前のようでいながら、たった18歳なのです。 これからの人生、ずっと長いのに。 すべて封じ込めるような生き方をするのは本当に悲しい。 とんでいって、彼らの肩を揺さぶってやりたい気分です。耳を貸してはくれないでしょうが。 苦い苦い、青春の物語でした。 表紙を見てみると。 3人は写真の中で微笑んでいるのでした。 無邪気な笑みはアルバムの中に抱かれて、分厚い表紙が閉じられるのね。 たまらなく悲しいです。 それでも、また手にとってしまうと思います、若竹七海 (^_^;) 後味としては、ちょっとこの本に似た感じでした。 閉ざされた夏 (感想はこちら) 夭逝した天才作家の文学記念館で、奇妙な放火未遂が相次いだ。和気あいあいとした記念館の雰囲気は一変し、職員たちの言動にもおかしな様子が…。新入り学芸員とミステリ作家の兄妹が、謎を追い始める。そんな折り、同僚の一人が他殺体で発見された!事件を解くカギは、天才作家の過去に!?ユーモラスでいて切なくほろ苦い、傑作青春ミステリ。 若竹七海の学園ミステリ・こちらもオススメです。 スクランブル 80年代を背景に、名門女子校で起きた殺人事件をめぐって、鮮やかに描き出された青春群像。17歳だったことのあるすべての人に贈る、ほろにがくて切ない学園ミステリの傑作。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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