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浦島太郎のつれづれ日記

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Dec 1, 2006
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妻に宛てた手紙です。書かれてから3年ほども経つのに彼女もとには届いてはいませんが。

妻へ

君の素晴らしさはこの十五年間ずっと感じ続けていた。
しかし、結婚以来、初めて入院らしい入院をしてみて、本当に君のことをずっと想っていたんだと実感した。

自分の早とちりから、五月に初めて救急車で運ばれた時には、脳の血管が破裂したものと思い込んでしまい、もしかすると駄目かもしれないとの考えが頭を過ぎった。
どんな辛い時も、命までは取られないとの思いで乗り越えてきた自分の命が危ないとなるとその恐怖はどんなだろうと思っていたら、命をなくす心配より、君のことを一人にする心配の方がはるかに大きく、激しい吐き気と頭痛で薄れる意識の中でただただ君のことだけを考え続けていた。
正直に言うと、子供達のことは微塵も思い浮かばなかった。本当に君のことだけだった。
以来、僕は死は怖くはないが命が惜しくなった。

公園デビューができずに、誰もいなくなった真夏の炎天下の公園で息子を遊ばせる君の姿に胸が締め付けられた。自転車の後ろに息子を前に娘を乗せ、病院や施設を次々に駆け回る君に両手を合わせた。昔の友人や他の子の親と、子供達の障害のことを明るく話した後で淋しそうな顔を隠す君の強さに心からありがとうと言った。
君は僕と結婚してからずっと苦労ばかり背負ってきた。
それなのにこの十五年間、やさしさと可憐さに力強さと明るさが加わった。
僕までもが障害者になってしまったというのに。

君は、僕と息子と娘の三人の障害者を抱えてなおも美しくしなやかに生きている。
僕は君という凄い宝物を手に入れている、と実感している。

忘れもしない、君が三十六歳になったある夜、君と僕の間に眠る娘の上の空間に向かって、一度でいいからママと呼ばれたかったと一言つぶやいたことがあった。
そういえば、君は二人の子の母となりながら、一度もママと呼ばれたことがなかった。
その時までずっともう一人の子を熱望していて、その瞬間にそのことをあきらめたことを確信した。
これから辛いことがあったら、このことを思い出そうと思う。
僕はおそらくどんな困難をも乗り切れるだろう。

ありがとう。







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Last updated  Dec 1, 2006 12:49:05 PM
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