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アメリカの作家、リチャード・マシスンが1975年に刊行した長編ファンタジーで、世界幻想文学大賞受賞後、クリストファー・リーブス主演で1980年には映画化もされている。マシスンの作品群の中でも異色といわれる極甘のラブストーリである。恥ずかしながらつい最近までこの作品のことは知らなかったのだが、世界中に熱烈なファンが多く、いまだにHPはファン同士でにぎわっているようだ(なんと、宝塚でも上演されたことがあるらしい)。
今回はまず最初に小説を読み、それからDVDを観てみた。どちらも号泣してしまった。どうも私はこの手のものにとても弱いようだ。ストーリーは、脳腫瘍であと半年の命と宣告された脚本家リチャードが、死に場所を求めて(?)一人旅に出るところから始まる。途中、サンディエゴのホテル、デル・コロナードで一人の女性のポートレイトを目にして彼の人生が一転する。その女性は、エリーズ・マッケナという19世紀後半から20世紀前半に活躍した舞台女優。古びた彼女の写真を見て抗い難い「何か」を感じたリチャードは、彼女に会いたい一心でタイムトラベルを試み、彼女のいた時代にうまくすべりこむことに成功、彼女とめでたく会うことができ…というお話。 主人公は2人とも「恋少なき」人である。様々な事情により、自分自身を檻の中に閉じ込めて、30歳になっても今まで心の底から人を好きになるようなことがなかった2人である。その2人にとって一生に一度だけの本当の恋は、あまりにもはかなくてたった一晩限りのものだった。それでも、二人が時空を超えて引き合わずにいられなかったのは、まさに運命の力。荒唐無稽な話なのに、妙なリアリティを感じるのは、そもそもが恋愛は荒唐無稽なものだからだろう。理論的に考えれば、時間は過去から未来にただ進んでいくものなのかもしれない。でも、人の気持ちにとっては時間は行きつ戻りつ、らせん状にぐるぐる回って巡り巡って人の心に波風を起こし続けるもののようにいつも思っている。 昔からずっとずっと知っているような気がする人がいる。どこかで会ったことがあるような気がする人がいる。ずっと前に一緒に暮らしていたような気がする人がいる。滅多にいないけど、そういう人がたまにいて、どうも切なくなってしまったりすることがある。この作品はそのへんのところを非常にうまく書いているので、永遠に褪せることのない魅力をこれからも放ち続けるだろう。 この作品に対抗する作品を書ける人、というと、日本では北村薫ではないかと思うのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.09.19 18:04:10
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