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その昔、定期的に買っていた雑誌といえば「マリークレール」と「芸術新潮」。もう今から随分昔のことなのですが、当時の「マリークレール」は映画評とか読書関係が充実していてすごく読み応えがあったし、「芸術新潮」は毎回あるアーティストとか歴史建造物とか場所とかをとりあげて、これまた読み応えのある文章と写真が美しく、それに加えて橋本治の「ひらがな美術史」が大好きだったので毎月楽しみにしていました。そのうち「マリークレール」は編集者が変わったのか、いつのまにかスノッブなただのファッション雑誌になってしまったので買わなくなり、「芸術新潮」の方も何となく買わなくなってしまったのでした。
そんな中、昼休みに本屋を徘徊していたら、なんとヘンリー・ダーガーの絵を表紙にしている雑誌があるじゃありませんか!おお~、と思って見たら懐かしの「芸術新潮」だったので、迷わず買ってしまいました。そしたら今月号の特集は、なんとアール・ブリュット!なるほど、だからヘンリー・ダーガーというわけなのですね。紙面の多くを飾るのは、アール・ブリュットな作品たち。相変わらず写真がとっても綺麗でうっとり。ううむ、またしても、束の間のパラダイスに耽溺する私。 アール・ブリュットとは、精神病などの要因から、社会の周辺にいる人々が作る、美術教育や商業主義に加工されていない生の芸術のことで、1945年にフランス人画家デュビュッフェが命名したとか。ヨーロッパでは、アールブリュットのコレクターなどの働きにより、美術館も充実し、研究も盛んだそうです。アメリカではアウトサーダーアートと呼ばれることが多いみたいだけど、それはちと違うのでは、と異論を立てているのが著名なコレクター、ブルノ氏の見解。なぜなら、彼らは社会的にはアウトサイダーでも、芸術と創造においてはインサイダーなのだから。アール・ブリュットのアーティストたちは、人生のある時点で通常の思考システムがほとんど全面的に崩壊してしまい、そしてその後、再構築という現象が劇的に起こることで、他の誰とも共有できない、自分だけに通用する言語、価値観、思考による内部システムを発明する。なので、彼らの作品は勝ち誇ったような力強さに満ちているのだそうです。 今回紹介されているアーティストたちの中では、ヘンリー・ダーガーとゾンネシュターンはワタリウム美術館とパルコギャラリーで本物の作品を観たことがあります。確かに、一種独特なエネルギーに満ち満ちていて、でも、きわめて個人的な内的世界に耽溺した作品なので、人の頭の中を覗き見しているような妙な気恥ずかしさを感じたのと同時に、観る者を開放するような、なんといったらいいのか摩訶不思議な気持ちで大いにくつろげたことを覚えています。 この世界を味わってみたい方、今なら銀座の「ハウス・オブ・シセイドウ」で11月27日まで展覧会が開かれているので、是非体験してみてください。私ももちろん行くつもりです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.11.03 20:50:26
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