500万年前頃まで北米に生きていた牙が横向きの奇妙な巨大サケ
もし現代にこんなサケが生きていたら、釣り上げようとした釣り人は逆に食われたかもしれない。現在、生きていなかったのは幸いかもしれないが、逆にこんな巨大なサケを養殖できたら、美味いサケを安く、たっぷり食べられたかもしれない。◎生体の体長は2.5メートル前後 このサケ、オンコリンクス・ラストロススは絶滅種ながら巨大で、成体の体長は2.4~2.7メートルもあった。サケ科史上最大の種と推定される(図のAはラストロスス、比較のためのBは現生のキングサーモン、釣り人Cと比較されたい)。 北太平洋や周辺の河川に数百万年前まで生息していたこの巨大サケ、ラストロススは、なんと上顎の先端から左右の牙が横向きに突き出ていた(写真)。アメリカ、オレゴン大などの研究チームが4月24日付けのアメリカのネット科学誌『プロスワン』に発表した。 オレゴン州で発見された化石が1970年代前半に報告された際は、牙のように発達した歯の特徴から「剣歯ザケ」と呼ばれる。この時点では、ラストロススは絶滅したサーベルタイガー(剣歯虎)のように牙が下を向いていると考えられていた。◎生息年代は1200万~500万年前 新たに見つかった化石を含め、研究チームがコンピューター断層撮影(CT)などで詳細に調べた結果、雌雄とも牙が横向きに突き出ていたことが判明した(想像図)。 牙以外の特徴は現代のベニザケに近く、主にプランクトンを食べていたとみられる。このため、牙はサメなどの天敵から身を守ったり、同種間で争ったりする他、産卵前に川底を掘るのに使ったと考えられるという。 生息年代は、新第三紀中新世後期から同鮮新世前期(1200万~500万年前)で、辛うじてアフリカでやっと初期猿人が出現した頃に重なる。ただこの頃、北米は無人の地だったから、人類が巨大サケの恩恵に浴すことはなかった。◎日本にもいたラストロスス この絶滅種の化石は、日本でも見つかっている。群馬県立自然史博物館によると、同県安中市の碓氷川の川岸で1999年に上顎骨の先端と牙1本が発見され、年代は約1100万年前と推定された。 日本の旧石器人や縄文人も、ラストロススを味わう機会はなかった。昨年の今日の日記:「函館の旅(2):五稜郭公園では桜は満開、タワーに登って星形の五稜郭を一望、土方歳三像も観る」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202304300000/